煩悩ラプソディ
第43章 双星プロローグ/AN
なに?
え、なんでコイツがウチに居んの?
一瞬でパニックに陥った脳ミソ。
元々使い物になってなかったそれに追い打ちを掛けるように、親父が信じられない言葉を発した。
「父さんな、こちらと再婚することにしたんだ。
これから一緒に暮らすから。頼むぞ」
満面の笑みで肩にポンと置かれた手。
その奥に控え目に微笑む綺麗な女の人と。
「相葉雅紀です。高二です。よろしくお願いします」
スッと立ち上がったソイツはやっぱり巷で言うところのイケメンで。
さっきの驚いた顔と一変して穏やかな笑顔で俺を見下ろしてくる。
…は?
「いやっ、ちょっと待って!え…マジで?」
「マジだ。言ってたろずっと。そろそろ再婚するって」
「いや言ってたけど今?つーか今日っ!?」
「今日も明日も一緒だろ。まぁお前には言ってなかったけどな」
ポンポンと肩を叩かれて開いた口が塞がらない。
昔から親父の言うことには基本逆らえないけど。
これはさすがに黙ってらんねぇって!
「やっ…やだよ俺っ!そんな急に言われてもっ」
「分かってるって。初めは緊張すると思うけどすぐに慣れるから」
「違っ、そういうことじゃなくて!コイツはっ…」
俺の前に佇むヤツを指差してハッとした。
…ダメだ、これを言ったら今日の痴漢野郎のこともバレてしまう。
俺が痴漢に遭ってるなんて親父に知られたら超絶恥ずかし…
「あ、和也くんとは今朝の電車で…」
「わぁ―――――っ!!」
慌てて目の前の口を両手で塞いだ。
は?コイツ何!?
バカなの?デリカシーとかねぇの!?
「おいお前何してんだ急に!雅紀くん大丈夫か?」
「うっさい!ちょっと来いお前っ!」
親父を振り切りわたわたするソイツの首根っこを掴まえてリビングを出た。
そのまま腕を引っ張って二階の部屋に連れて行き。
勢い任せにドアを開けて部屋の中にソイツを押し込む。
きょとんと言う言葉を貼り付けたような顔でこちらを見つめてくる瞳にイライラが募り。