煩悩ラプソディ
第43章 双星プロローグ/AN
どやどやと流れ出る人波に押されながらホームを歩く。
翔ちゃんはまだあくびをかまし目をごしごし擦ってて。
そんなに話してたっけ俺。
自覚なかったなー。
付き合わせて悪かったなマジで。
今度学食でも奢ってやろ、と考えていると急に背後からガシっと肩を掴まれた。
っ…!
驚いて声も出ずに振り向けば、そこには眉間に皺を寄せて詰め寄ってくるアイツが。
「兄ちゃん!大丈夫だった!?」
「っ、は…」
「今日は大丈夫だった?」
どんどんと後ろからぶつかられるのも気にせずに、両肩をしっかり掴んで窺ってくる瞳。
「ちょっ、離せよっ!」
「大丈夫だったの?ねぇ!」
「うるせぇよ!お前に関係ねぇだろっ!」
肩に乗せられた手を振り解きそう言い放つと。
傍らの翔ちゃんはピンと来たらしく。
「あ、君がニノの弟になる子?」
「あ…はい、相葉雅紀です」
「そっか、二年だっけ?へぇ~イケメンじゃん」
ニコニコして話す翔ちゃんは何を思ったかソイツと肩を組みだして。
「俺ニノの友達の櫻井っつの。これからよろしく~」
「あ…はい!」
そうして俺の横を通り過ぎて行く二人。
呆然とその背中を追っていると翔ちゃんが振り返って。
「何してんだよニノ!遅れるぞ」
ニヤニヤしながらそう言われ、その顔を睨み付けながら小さく舌打ちをひとつ。
…櫻井翔め。
そんなに寝不足にされたのが恨めしいか!
前言撤回。
学食奢ってやるのなし。
ずんずんと前を歩く二人の少し後、距離を取りながら学校への道を歩いて行った。
***
「つーかさ、なんでそこまで嫌いなワケ?」
賑わう学食の喧騒に紛れ翔ちゃんの疑問が飛んできた。
今日の日替わりは生姜焼き。
いつもは弁当だけど今日は家出したからな。
財布もねぇから奢ってやるどころか奢らせてやったわ。
親父の味とはまた違う生姜焼きをもぐもぐしつつ、その問いに答えようと思考を巡らせる。
嫌いなワケ…
おせっかい、デリカシーない、馴れ馴れしい、俺より背が高い、俺よりモテそう、俺よりしっかりしてそう、なんとなく勉強も出来そう、母ちゃんも美人、それから…
ぐるぐる巡らせていた思考と同時にふと箸が止まる。