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煩悩ラプソディ

第43章 双星プロローグ/AN






のそりと体を起こして項垂れる。


スウェットの中心が視界に入り、さっきの夢の中の感触が蘇って思わず顔を覆いたくなった。



智と会ったあの日、ついポロっと話してしまったこと。


アイツへの…


雅紀に対する俺の感情のこと。


自分自身、何とかごまかそうと思っていた。


違う、これは違うんだって思い込もうとしていた。


そんな筈がないって。


何かの間違いだって。


でも…やっぱり認めざるを得ないらしい。


さっきの夢でそれが決定的になった気がする。


だって今までと一緒なんだよ、どう考えたって。


雅紀のことを考えると胸が苦しい。


雅紀に触れられるとその部分が熱い。


雅紀に見つめられると逸らせない。


これまで経験してきた恋愛の初期段階と全く同じ。


…てことはさ。


でも、その先の言葉をどうしてもまだ受け入れられないでいる。


智はあんな調子で『ニノがそう思うならいいんじゃない?』ってさらりと言ってのけたけれど。


そう簡単にいくもんじゃねぇよ、こんなの。


だって相手は男だし。


弟…だし。


ふいに雅紀が俺を呼ぶ"兄ちゃん"というフレーズが脳裏を過ぎった。


アイツは俺のこと家族だって、兄ちゃんだって思ってんだから。


こんなの考えること自体が不毛だわ。


なんで俺がこんな目に遭わなきゃなんねぇんだよ。


アイツに会ってさえなかったら、こんな世界中誰も興味の持たない恋愛話なんか生まれなかったのに。



項垂れたままはぁ~っと溜息を吐いた時、窓の外から物音が聞こえてきて。


カーテンの隙間を覗けば、トラックが一台停まって荷台から段ボールが次々に運び込まれている。


その光景を見てハッとした。


「和也ー!早く起きろ!降りてこい!」


丁度のタイミングで下から親父の呼ぶ声が聞こえ、慌ててベッドから飛び降りる。



…つーか親父ももっと早く起こせよ!


完全に寝起きじゃん俺!



ドタドタと階段を駆け降りると玄関でバッタリ雅紀と対面してしまい。


「おはよう、今起きたの?」

「おぅ…はよ」


段ボールを抱えて微笑むその顔に、不覚にもまた心臓がきゅっと締め付けられて。


と同時にたちまち襲い掛かる不安要素。



これから雅紀と一緒に住むって…


大丈夫なの?俺…

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