煩悩ラプソディ
第43章 双星プロローグ/AN
人波の中、足並みを揃えながら歩く通学路。
電車から降りれば一気に冷たい風に見舞われ、マフラーをぐるぐる巻きにしていても肩が強張ってしまう程で。
「ふふっ、そんなに寒い?ここ赤くなってるけど」
「っ!お前だってっ…」
つんと俺の鼻を突いてくる雅紀の鼻の頭だって十分赤くなってるくせに。
俺の方が年上の筈なのに、最近では立場が逆転したように兄貴振られることがある。
そういうたまに見せる一面にまだ免疫が出来ていない俺も俺なんだけど。
「よっ、ブラコン兄弟!」
背後からいきなりガシッと肩を組まれ驚けば、朝から安定のニヤニヤ顔の翔ちゃんが。
「…あ、俺お邪魔?すまんすまん、じゃあ先行ってるわ」
「ちょっと!わざとらしいんだよ!つーか別に邪魔とかじゃねぇし…」
困り顔の雅紀と俺の間に入り込む翔ちゃんは先に行く気配など全くなくて。
智にしか打ち明けていなかった雅紀とのこと。
でもこれだけ毎日一緒に居る翔ちゃんにはさすがに隠し通すことは出来ず。
経緯も含めて神妙に自白すると、意外な言葉が返ってきた。
"え?あ、そうなの?
やっぱそうだよな?
だろうと思ったわ"
って。
あっさり受け止めてくれた時にはこっちが面食らったけれど。
それからも翔ちゃんは至って今までと同じように接してくれる。
俺にも、雅紀にも。
…こんなだけどやっぱ翔ちゃんっていい親友なんだな、今更だけど。