煩悩ラプソディ
第44章 恋してはじめて知った君/SO
いつもみんなで行くファミレス。
四人で座ることに慣れつつあったけれど、今日は向かいの席に三人がぎゅうぎゅうに並ぶ。
「うわ新メニュー出てんじゃん…え〜どうしよっかな」
「俺ミックスグリルのライスセット大盛とチョコバナナパフェ!」
「やだ。イチゴのパンケーキにしろ」
「なんでにのが決めんだよっ!
今日はバナナの気分なの〜」
「おいお前押すなって!」
難しい顔でメニュー表とにらめっこをする松本くんと。
その目の前にある呼び出しボタンを押す相葉くんを止める二宮くんと。
そして俺の隣には。
「…ふはは。相変わらずだな〜お前ら」
メニュー表から目を上げて緩く笑う整った横顔が。
…相変わらずなのは櫻井くんもだって。
つい目を奪われてしまうのを隠すように、もう既に決まりきっているメニュー写真へと視線を泳がせる。
「大ちゃんは?決まった?」
「っ!」
急に呼び掛けられて必要以上にビクついてしまい、隣の櫻井くんがこちらを向いた気配がした。
その視線にどぎまぎしつついつものメニューを呟くと。
「…じゃあ俺もそれにしよっかな」
そう言ってメニュー表をパタンと閉じた手元。
目線を上げれば頬杖をついたまま微笑むその瞳とバッチリ交差して。
っ…!
今日何度目か分からないくらい飛んできた矢がまたも心臓に突き刺さり。
そして、久し振りの櫻井くんとの対面が想像していたより何倍も自分を狂わせることを痛感した。
自分の中に描いていた瞳がせっかくこちらを向いているというのに。
櫻井くんが日本に居る僅かなこの時間。
こんな調子だとあっという間に空港でその背中を見送る画が容易く浮かぶ。
でも…いつまでもそんなんじゃダメだって。
いい加減自分の殻を破らなきゃって。
帰国の知らせを聞いたその日から、密かに覚悟を決めていた。