煩悩ラプソディ
第45章 流星エピローグ/AN
それが来週から親父たちが居ないとなると…
ゆっくりとご飯粒を噛み締めながら脳裏に浮かんでくるイメージ。
晩飯も終わって風呂も入った後、いつものように何気なくゲームしてたら。
急に部屋のドアがノックされて"かずくん?"って呼ばれたりして。
ドキドキするのを何とか隠しつつ雅紀と一緒にゲームして。
そしたら急に"母さんたち居ないね"みたいな話になってさ。
俺も"そうだね"なんて平静を装って返事したら。
雅紀が"じゃあ一緒に寝る?"なんつってきたりして。
それでなんかいい感じになって…
もしかしたら、もしかすると…
「…だよな?和也」
「うぇっ!?」
トリップしていた脳内に急に刺さった親父の声。
変な声で返事をしてしまった俺に不審な眼差しを向けてくる。
やっば…!
完全に一人で舞い上がっちゃっ…
「なんだその顔は。だから飯のことは雅紀くんが居るから心配ないなって。お前もちゃんと家事とか手伝うんだぞ」
「えっ?」
「大丈夫だよ父さん。俺が居るから大丈夫」
すかさず発した雅紀の言葉はフォローなのか何なのか。
「ね?かずくん。大丈夫だよね、俺が居るから」
「っ…」
そしてこんな真隣から満面の笑みなんか向けられたら。
一瞬でさっきの妄想にトリップしてしまいそうで、慌ててふるふると頭を振りイメージを蹴散らしたのに。
「え、どうしたの?頭痛い?」
ふいに横から伸びてきた大きな手に過剰に反応してしまい。
「っ…ご、ごちそうさまっ!」
「えっ、かずくん!」
ガタンと椅子から立ち上がって動揺を隠しきれないままリビングを飛び出した。
駆け込んだ自室のベッドにドサッと身を投げて思うこと。
予想もしなかったシチュエーションに勝手な妄想ばかりが膨らんで。
何をこんなに浮き足立ってるんだろう。
いつから俺はこんな恋愛体質になってしまったんだ。
さっきの雅紀の笑顔を見ただけで居ても立ってもいられないなんて。
うつ伏せて枕を抱えたままはぁっと溜息を溢す。
もし雅紀とそんなことになったら…
俺っ…
たちまち加速しだす心臓。
自分の部屋なのに全然落ち着かない。
あ〜…もうっ!
ざわつくこの気持ちを何とかしたくて、スマホを取り出し指を滑らせた。