煩悩ラプソディ
第45章 流星エピローグ/AN
「お前何やってんだよ、先輩だぞ!」
「…るっせーな」
「マジちょっと目離したらすぐこれだから」
「うるせぇ、調子乗んなよ斗真」
この"トウマ"と言うヤツはマツジュンの友達なのか保護者的役割なのか。
どっちにしてもいいタイミングで登場してくれて助かったけど。
そのトウマがふいにこちらを向いて。
「ぁ…もしかしてあなたが相葉くんのお兄さんですか?」
「えっ、あ…まぁそうだけど」
急に向けられた眼差しに一瞬緩んだ糸がまたピンと張り詰めた。
ジッと見つめてくる大きな瞳。
無駄に整った顔立ちも相まって目ヂカラ半端ないんだけど。
「…なるほど。潤、お前無理だよ。諦めな」
そう言ってマツジュンの肩をポンと叩いたトウマ。
…は?
「あぁ!?お前が決めてんじゃねぇよ!」
「はいはいあくまで個人的見解で〜す。じゃあ失礼しました!」
今にも暴れ出しそうなマツジュンの背中を押しつつ、ペコリと会釈をしてトウマは去っていった。
その場に取り残された俺と翔ちゃんはぼんやりとその背中を見つめたまま。
「…なんだあれ」
「…ね」
何事もなかったように活気に溢れる食堂、いつもの日常に戻るべく再び席に着いた。
伸びきってしまったうどんを箸で摘まみつつ、さっきのマツジュンの鋭い目つきが頭にこびり付いて離れない。
マジでアイツなんなの。
俺と雅紀の邪魔しようっての?
そもそもあの口の悪さと目つきじゃ雅紀が相手にするワケねぇじゃん。
しかもさ、トウマも無理だって言ってたし。
友達にああもキッパリ言われちゃさすがのマツジュンも萎えんだろ。
よし諦めろ諦めろ。
今すぐに諦めてしまえ。
お前なんかに雅紀を取られてたまるか、ふん!
「なぁニノ」
「ふん?」
心なしかさっきよりトーンダウンしたような声。
目を上げるといつになく真剣な瞳とぶつかり。
「…アイツちょっと気ィ付けたほうがいいんじゃね?」
「え?」
「なんとなくだけどさ…何やらかすか分かんねぇ気がする」
「…やらかすってなによ」
アイツが雅紀に何を…
「とにかくアイツには気ィ付けろよ」
「だから何を、」
「ちんたらしてっと先ヤられんぞ」
「え?」
言い終えてまたカツ丼を食べ始めた翔ちゃん。
は?
どーゆー意味?