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煩悩ラプソディ

第45章 流星エピローグ/AN






食べそびれた昼飯のせいか、はたまたついさっきの出来事のせいか。


唇にまだ微かに残るその感触が忘れられなくて。


落とす視線は活字を追いつつも、その内容を理解するまでの余裕はなかった。



かずくんから…


キス、されちゃったよ…


朝のかずくんのおかしな様子が気になって仕方なくて。


電話も全然出ないしでいっそのこと会いに行っちゃえって勢い任せでトイレに連れ込んだけど。


やっぱ急にあんなことしたらそりゃ警戒するよね。


めちゃくちゃ怯えた目で俺のこと見てたし…


もしかして朝言ったアレのせいだったのかな。


"かずくんを食べたい"って言っちゃったヤツ。


ちょっと鎌かけてみようと思ったんだ、正直なところ。


俺はかずくんと恋人になってずっと我慢してたから。


恋人なんだから今以上の関係になりたいって、ずっとそう思ってた。


でももしかしたら俺ばっかりがそんなこと考えてんじゃないかなって急に不安になって。


だからポロっと本音を出してみたんだけど。


かずくんはそんなつもりなんてなかったのかな…ってさ。


だから電車にも一人で乗っちゃったんじゃないかって。


何もされてなくてマジで良かったんだけど…



中指でそろりと唇を撫でてみる。


瞬時に浮かぶのは目を閉じながら顔を傾けてくるさっきのかずくんの顔。


一瞬のことだったけど、その感触は不思議と鮮明に覚えていて。


あのキスって…
もう一人で電車に乗らないよって誓うキス?


それはそれで絶対誓ってほしいのは山々だけどさ。


「はぁ…」


教科書に隠れて小さく溜息。


せっかく今日から母さんたち居ないのに。


こんなチャンスこれからあるかも分からないのに。


でもかずくんのこと傷付けたくないし、嫌がって泣かれでもしたら俺マジで立ち直れそうにない。


いくべきか、いかざるべきか。


今日の俺の行動で全てが決まる。


うっわぁ~どうしよ!


かずくんの心が読めねぇよっ!



「……と、いうことで今日はここまで。じゃあ号令」


いつの間にか授業も終わって教室内が慌ただしく動き出す。


この後のHRが終わったらとりあえずかずくんとこ迎えに行って…


これからの計画を組み立てようと思考を巡らせていた時、普段あまり聞かない声が俺の名を呼んだ。

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