煩悩ラプソディ
第45章 流星エピローグ/AN
「え、資料庫の整理?」
両手を顔の前に合わせ申し訳なさそうに頭を下げられて。
「相葉マジで頼む!俺一人じゃどう考えたって終わんなくてさ!」
言いながら"ね?お願い!"って尚も両手をパンパン響かせる生田。
これからかずくんを迎えに行って様子を窺おうって思っていたのに。
なんでまた俺なの?
「…ごめんあのさ、今日は俺ちょっと、」
「頼むよ相葉っ!マジでこの通り!」
今度は最敬礼と言わんばかりに腰を折って深く頭を下げられてしまい。
そこまでされたら無下に断れないのが俺の短所なワケで。
「じゃあ…30分だけでもいい?」
「えっマジ!?全然いい!いやめっちゃ助かる!ありがと~相葉ぁ~!」
そのままタックルするように抱き着かれよろめいた。
そこまで親しい訳でもないクラスメイトの委員会の仕事まで手伝うなんて。
俺どこまでお人好しなんだろ…
「分かったからさ、ちょっと連絡だけ入れていい?」
「あ、ごめん全然どうぞ!…あ、それってもしかしてお兄さん?」
「え?」
ふいにそれまでのテンションから一変した静かなトーンで生田が問い掛けてきた。
手元のスマホと俺とをチラチラ見て返答を催促しているような瞳。
「まぁ、うん…そうだけど」
「へぇ~そっか。いつも一緒に帰ってんの?」
「うん、兄ちゃんがバイトない日は…なんで?」
「え?いやいや別に!なんか仲良いなぁって思って。羨ましいな~って」
ヘラッと笑う顔は何か他に言いたいことがあるような雰囲気だけど。
もしかして気付いてる?
俺とかずくんとのこと…
チラッとその瞳を窺ってもニコニコと笑顔を貼り付けているだけで。
「…ほんとに30分でいい?俺マジで用事あるから」
「もちろん!きっかり30分で!」
ビシッと指を三本立てて約束した生田に背を向けて、急いでスマホに指を滑らせた。