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煩悩ラプソディ

第45章 流星エピローグ/AN






いや俺だって溜息吐きたいわ。


覚悟を決めたっていうのはもちろん嘘じゃない。


ちゃんと向き合うって、それはイコール自分の気持ちに素直になることだって。


だから…雅紀と先に進みたいって気持ちを伝えるのがその"覚悟"なワケなんだけど。


でもさ、もしかしたら雅紀の方から何か仕掛けてくるんじゃないかとか。


だってそうじゃん?
雅紀が"かずくんを食べたい"なんて言ったんだもん。


そうでしょ。
いやそうなんだよ。


なのにさ…
そんな雰囲気まるで出さないなんて反則じゃねぇの?



またマイナス思考に支配されそうになる意識。


ひたすらコンティニューを問うてくる画面をぼんやりと見つめていたら、斜め後ろから小さく呼び掛けられて。


「あのさ…聞いてほしいことがあるんだ」


振り向いた視線の先で真っ直ぐにこちらを見上げる瞳とぶつかった。


その瞳は不安そうにも見えれば強い意志を込めているようにも見えて。


雅紀の感情が読めないままジッと見つめ返していると。


っ…!


ふいにガバッと起き上がったもんだから思いっ切りビクついてしまい。


な、なに…


何か探すように視線を彷徨わせたのは一瞬で、その手は躊躇いなく俺の左手首を掴み。


「ベッド行こっか」

「っ、へっ?」


ぐいっと引っ張られ無理やり立ち上がらされた後、数歩先のベッドへと連れて行かれて。


えっ、急に!?


ちょっ、待ってまだ心の準備っ…


そう思ったのも束の間、体を包み込まれる衝撃に思わず目を瞑った。


……え?


背中を包み込む温もり。


前に回された腕はしっかりと緩みなく。


足の間に座るような格好で腰掛けた状態。


バクバクと波打つ心臓は密着した雅紀にも確実に伝わっているだろう。


後ろからハグだなんて初めてでどうしたらいいか分からない。


ぎゅうぎゅうに抱き締められる力強さと。


頬に寄り添う熱と。


静かに感じる息遣いと。


それらを一手に受けながら、どこに目を遣るのが正解なのか教えてほしい。


「…かずくん、」


ぽつり囁いた声はダイレクトに耳に届いて。


密着した体ではその声だけでドクドクと昂りが増していくのが分かる。

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