煩悩ラプソディ
第45章 流星エピローグ/AN
少し高い位置にある薄茶色の瞳が水分を纏ってゆらゆらと揺れている。
普段はあまり言われることのないかずくんからのその言葉。
"一番好き"だなんて…
こんなの嬉しくないワケがない。
嬉しすぎて鼻血でも出そうなほど。
感激に言葉を詰まらせていると、下ろしていた手がそっと俺の頬に触れて。
うるうると揺らめく瞳からまるで文字が浮き出てくるような感覚。
"目は口ほどに物を言う"ってまさにこのことなんじゃないかって。
かずくんの瞳が『キスしたい』って言ってる。
そんなの俺だって…
頬に添えられた柔らかな手をそっと握り返し。
頬を赤く染めて仔犬みたいに眉が下がったかずくんを見つめ返したら。
"雅紀…シたい"
その瞳からまた声が聞こえてきたような気がして、ドクンと体の奥が疼いた。
かずくんっ…
握っていた手をクイッと動かせば簡単に傾いた体。
迎え入れるようにして唇を合わせると、一瞬にしてそこから体中に熱が回りだす。
っ…
太腿に跨った状態だったかずくんとの距離は更に縮まって。
思わず空いていた左手を背中に回したら、応えるようにかずくんもしがみついてきた。
同時に、沿うように触れているだけだったそれがはむっと動かされ、条件反射で隙間を作れば。
更にぐっと押し付けてきた唇から滑らかな舌が触れて。
「…ぁ、はぁっ…」
漏れ出た吐息のような高い声が耳に入った途端、下腹部にドクドクと熱い血が集まってきた。
今まで聞いたことのないかずくんの甘い声色。
薄っすらと目を開ければ、眉を下げて睫毛を震わせながら吐息を漏らす悩ましげな顔が飛び込んできて。
っ…!
一気に昂りを増す下半身。
こんなに可愛い声と顔を間近で受け止めてるなんて。
"無我夢中"という言葉が当て嵌まるようなキス。
ガツガツした野獣みたいなのじゃ決してないんだけど。
絶えず求めてくるような、本能的に必要とされているようなこの行為に益々昂ってしょうがない。
やばい…
もう俺、ガマンできない…
傾けていた顔をそっと離せば小さな吐息と共に離れていった唇。
濡れて艶の出たそれと蕩けた瞳を鼻先で向けられ、思わずごくりと唾を飲み込んだ。