煩悩ラプソディ
第45章 流星エピローグ/AN
意識の隅にスマホのアラーム音が響き渡る。
しょうがなく瞼を開ければカーテン越しに漏れる光がいつもの朝が来たことを教えてくれて。
けれどひんやりとした部屋の空気に耐えられず羽毛布団の温もりに浸っていると。
やたら下半身が寒い。
膝を擦り合わせるとスウェットじゃない明らかに短い布地の感触。
え…なんで?
ぼんやりとそんなことを考えた時、ハッと動きが止まった。
昨日…
あれ?俺昨日って…
瞬時に昨夜の出来事がフラッシュバックされる。
俺昨日、雅紀と…
頭を振り絞って懸命に記憶を辿るけれど。
どうにも途中から思い出せなくて。
待って…ちゃんと最後までいったっけ?
うそ、全然覚えてないんだけど…!
思わずベッドから飛び起きて全身を確認した。
昨日着てたスウェットと、この短パン…とパンツは俺のじゃない。
…あ。
ハッとしてお尻を撫でてみても何の違和感も無し。
事前に集めていた情報によると受ける側はかなりの負担になるとは知っていたから。
その場で軽くジャンプをしてみてもおかしいところは一つも無く。
もしかして…俺、できなかった?
まさかめちゃくちゃ抵抗して暴れたとか…?
うわっ、俺最低じゃん…!
全く思い出せない記憶に自分でも段々と怖くなってきて。
自分でどうにもできないのなら確認するしかない。
起き抜けに嫌な汗を感じつつリビングへと足を進めた。
***
そろりとリビングのドアを開ければ、すでに朝食のいい匂いが漂っていて。
キッチンに立つ後姿にどきりと心臓が跳ねたままそこから動くことが出来ずに。
…いやでもさ、なんて言ったらいいの?
昨日のこと覚えてないんだけど、ってのはあんまりだよな。
俺たち最後までいった?ってそんなストレートに…
「あ、かずくんおはよ」
いきなり掛けられた声にびくっと肩を揺らした。
テーブルに皿を置きながらニコッと微笑んでくる雅紀。
「どうしたの?もうご飯出来たよ」
言いながら未だドアの前で固まる俺の元へと歩いてきて。
「おはよ」
ふふっと笑ったかと思ったらその顔が近付き。
…ちゅ。
軽く触れた唇の感触はすぐに離れていき、代わりに手首を握られテーブルへと引っ張られた。