煩悩ラプソディ
第10章 星に願いを/AN
「…寒い?」
「ん…まぁね」
わざとらしく鼻をズッと啜ると、その様子を見たにのがフッと笑った。
「ほら、」
ふいに、両手で俺の右手を握る。
「あったかいでしょ?」
一瞬のことに驚いたが、伝わる温もりに自然と笑みがこぼれだす。
にのの手は、子どもみたいにあったかい。
なんか安心する。
手を握ったままこちらを見上げているにの。
いつもなら、こんなこっぱずかしいこと絶対しないのに。
普段とそぐわないその仕草にこっちが恥ずかしくなって。
「ふふ…子どもみたいな手だね、相変わらず」
照れ隠しのつもりでそう言うと、少しムッとして手を離され。
「…うるさいな」
離れた温もりを惜しみつつほんとに子どもみたいなその様子に苦笑し、話を本題に持っていった。
「で、なに?なんで呼んだの?」
「え?あぁ、あのさ、星がね」
「星?」
足を投げ出して背中を丸めてそう告げたにのが、空を見上げたのにつられて俺も見上げる。
「うわ…」
思わず声を上げた。
一面に広がる、輝く星の群れ。
こんな綺麗な星見たのって何年振りだろう。