煩悩ラプソディ
第45章 流星エピローグ/AN
起き上がれないくらい腰をやっちゃったのは勿論俺のせいなんだから。
だからこそ無理して学校行かないで休もうって提案したんだけど。
何度説得しても"絶対休まない!"の一点張り。
「ねぇかずくん…やっぱ今日は無理だよ」
「いや絶対休まない!休んだりなんかしたら翔ちゃんに何言われるか分かんねぇしっ…」
言いながらものすごくゆっくりと階段を降りてきたかずくん。
こんなペースじゃ休まない代わりに完璧に遅刻しちゃうってば。
「…じゃあ俺がおんぶしよっか?」
「はっ?何バカな、いっっ…!」
少しでも声を荒げたりしたら腰にクるみたいで、耐えるようにその場でジッと動かなくなってしまった。
こんな状態のかずくんをこれ以上歩かせるワケにはいかない。
それにこのままじゃ俺も一緒に遅刻しちゃうし。
…とにかく今日は家に居てもらわないと、うん。
「かずくんごめん、俺に掴まってて」
「え?うわっ!いって!」
言いながら項垂れる小さくなった体を正面から抱き上げて。
「…ちょっ、怖いっ!雅紀っ!」
「絶対落とさないから!掴まってて!」
腰を曲げないように半ば担ぐ形で階段を駆け上がり。
幸い少しだけ開いていたかずくんの部屋のドアを蹴ってそのままベッドへ一直線。
頭を支えながらゆっくりと降ろせば痛みに顰めていた瞳が俺を見上げた。
その瞳は納得いかない感丸出しで眉間に皺が寄っているけれど。
「ごめん、お願いだから今日は無理しないで」
「……」
「授業終わったらマッハで帰ってくるから」
「…わかった」
俺の真剣さが伝わったのか腰の痛みにようやく観念したのか。
ぽつり返事をしたかずくんはふっと力を抜いてシーツに完全に体を預けた。
その姿にホッとしたのも束の間、時計の針は間もなく出発時刻に差し掛かろうとしていて。
「じゃあ行ってくるね。…あ、そうだ」
あぶないあぶない、肝心なことを忘れてた。
不思議そうにこちらを見上げるかずくんに近付いてそっと唇にキスを落とすと。
「っ、なっ…」
「じゃ、いってきまーす!」
半身起こそうとしたけど痛みに敵わずにまたベッドに沈んだかずくんを見届けて。
ダッシュで階段を駆け下りてバタバタと家を出た。