煩悩ラプソディ
第45章 流星エピローグ/AN
授業中も家に残してきたかずくんのことが気になって仕方なくて。
合間合間にLINEをしたりして生存確認は怠らず。
ちゃんと昼ご飯も食べれたみたいだしとりあえず大丈夫かな。
そんなだから今朝の生田のことなんかすっかり抜け落ちていたんだけど。
「あ、相葉!」
帰り際、その生田に急に呼び止められて。
両手を擦り合わせて"お願い"のポーズで近付いてきた姿に、いつかの場面が重なりギクッとしたのも束の間。
「ちょっと頼みがあるんだけどさぁ…」
申し訳なさそうな顔をしながら口を開こうとしたから慌ててストップをかける。
「待った!今日はマジでなんも手伝えないから!」
「えっ?いや違う違うそうじゃなくて!ちょっと相談っつーかさ…」
「…相談?」
未だ若干の不信感を抱きつつも、こめかみをポリポリ掻きながら話し出した生田の話に耳を傾けた。
***
「ただいまー!かずくーん!」
家に帰り着くなり一目散にかずくんの部屋へ。
一応ノックはしても返事を待たずにドアをバタンと開ければ。
…あれ?
ベッドには抜け殻みたいな形になった布団があるだけ。
部屋の中も暖房が入ってなくて人が居た形跡がない。
え?かずくんどっか行ったの?
首を捻りながら階段を降りてリビングのドアを開けると、途端に暖気が体を包み込んだ。
「おかえりー」
その言葉と同時にソファの背凭れからぴょこっと覗かせた手が視界に入って。
「なんだ〜こっちに居たの?」
「んー、だっていちいち部屋戻んの大変だもん」
正面に回ってかずくんを確認すると、ブランケットを被って横たわる瞳が俺を見上げる。
「腰どう?大丈夫?」
「んー…朝よりマシかな。大丈夫」
「そっか…」
傍にしゃがんでかずくんの顔色を窺う。
うん、朝よりはいい顔してるかも。
にこっと笑ってさわさわと頭を撫でれば、パッと耳が赤くなったのが分かった。
ふふ、すぐ反応しちゃうとこほんと可愛いなぁ…
内心独り言を呟いているとかずくんが俺をジッと見つめているのに気付いて。
…ん?
「…雅紀おかえり」
「うん?ただいま」
「…おかえり」
返事をしてもまだ何か言いたげに揺れている瞳。