煩悩ラプソディ
第45章 流星エピローグ/AN
あの後すぐにかずくんに隠れて櫻井先輩に抗議のLINEをしたものの。
《分かってねぇな。ニノがフツーに言ってすんなりOKするワケねーだろ。ここは黙って俺に任せとけ》
って意味分かんないスタンプと一緒にそう返ってきただけ。
しかもやたらとかずくんの機嫌が良いもんだからもう後には引けなくなっちゃって。
はぁと溜息を溢しつつフライパンを煽る。
…でも確かに楽しみっちゃ楽しみかも。
思えばこれまでかずくんとデートらしいことしてなかったし。
引っ越してきてバタバタ忙しかったし、かずくんは受験勉強で休日返上してたし。
何気に俺らの正式な初デート?
けどそれがこんな形になるなんてなぁ…
「雅紀ー、もう座ってていい?」
呼ばれて振り返れば、かずくんがノロノロとダイニングテーブルまで歩いてきていて。
「大丈夫?」
「ん、へーきへーき」
慌てて近寄って肩を抱くとふふっと笑うやっぱりご機嫌な顔。
ゆっくりと椅子に腰掛けさせて、仕上がった炒飯を皿に盛りテーブルへ置いた。
向かいに座りいつものように揃って"いただきます"をして。
「ん、んまい」
「そう?良かった」
すぐに零れたその言葉と笑顔に釣られて俺も大きな口で頬張った。
「日曜ってさ、親父たち帰ってくる日だよね?」
少しの沈黙の後、もぐもぐと口を動かしながら目を上げてそう問い掛けられ。
そういえば日曜には新婚旅行から帰ってくるって言ってたな、と思い出した。
「うん、確かそう言ってたね」
「だよね。親父たちも目一杯楽しんでくるんだろうからさ、俺たちもね」
そう言ってもぐもぐと口を動かしながら。
「楽しみだね、日曜」
口角を上げて可愛い笑顔を向けるかずくんに胸を鷲掴みにされると同時に。
純粋に楽しみにしているのを騙してるみたいになっている現状に、後ろめたさが募って仕方がない。
櫻井先輩…ほんとに大丈夫?
このまま信じてていいの?俺…
向かいでひたすら口をもぐもぐさせている姿を見れば見る程その思いは拭い切れず。
遊園地久し振りとか、何食べる?なんて嬉しそうに話すかずくんの話に相槌を打つので精一杯だった。