煩悩ラプソディ
第45章 流星エピローグ/AN
「いやお前ら早くね?つーか朝っぱらからいちゃいちゃしてんじゃねーよ!」
笑いながら駆け寄ってきた櫻井先輩にツッこまれ、慌てたかずくんに手を振り払われた。
思えば櫻井先輩ともこうして休日に会うのは初めて。
やっぱりブレザーじゃない私服って新鮮だなって改めて思ったりして。
「いや~それにしても楽しみだな今日は!ニノと遊ぶのなんていつぶり?」
「なに急にテンション上がってんのよ。え~っといつだっけ?二年の文化祭の後ぶり?」
「あ~あったな、みんなでボウリング行ったやつ!あん時さぁ、お前スコア散々だったよな」
「は?俺じゃなくて翔ちゃんでしょうよ。三連続ガーターで断トツ最下位だったじゃん」
目の前で懐かしそうに話す二人にちょっと置いてけぼりくらった感。
俺たちが出会う前の、俺の知らないかずくんの話。
そんなの仕方のないことだけど、やっぱりなんか寂しいっていうか。
「ねぇあのさ、なんで今日遊園地なワケ?」
「あん?いいじゃねぇかよ、なぁ!雅紀」
いきなり俺に振られ思わず"うん"と首を縦に振ると。
「まぁいいけどさ…じゃあ俺ずっと荷物番ってこと?」
少し拗ねたように唇を尖らせて俺を見上げる瞳。
え?なんでかずくんが荷物番なの?
「そんなことねぇよ、お前だって乗れるのあんじゃん。メリーゴーランドとか」
「は?誰が乗るかよバーカ。いいよ二人で楽しんでくれば?」
「え?あの…かずくんは一緒に乗らないの?」
「いや乗れないの、俺は。嫌いなの、そういうの」
「えっ!?」
かずくんのその返答に弾かれたように櫻井先輩を見れば。
口角を上げてニヤッと悪い顔で笑っていて。
マジかよ…そういうことか。
かずくんと別行動になる場所ってことで遊園地なのか。
なんて悪巧みの冴える人なんだ…
「まぁまぁそんな顔すんなって!せっかくなんだから楽しもうぜ」
「言われなくても分かってるわ。…いいよ、雅紀いるし」
「えっ…」
最後にボソッと呟いた言葉に思わず反応してしまった俺。
目が合って一瞬でポッと赤くなった目元にきゅんと心臓が鳴って。
「おいおいおい~!俺って今日お邪魔?」
「は?今頃気付いたの?おっせ」
胸の高鳴りと同時に。
どんどん募ってくる後ろめたさはどうしても隠し切れなかった。