煩悩ラプソディ
第45章 流星エピローグ/AN
木製のベンチに座って目の前にそびえ立つアトラクションの数々を見上げる。
さっきは"荷物番かよ"だなんて悪態吐いたけど。
そんなの別に何とも思っちゃいない。
そんなことどうだっていいんだ。
だってこんなに早く雅紀と出掛ける日が来るなんて思ってなかったから。
俺が休みの日も部屋にこもって受験勉強してるのを雅紀は知っていたし。
だからきっとアイツなりの優しさで、これまで遊びの誘いなんて一度たりともなかった。
思えば俺たちって出会ってすぐ兄弟になって、そんであっという間に恋人って関係になって。
謂わゆる"飛び級"みたいな。
だからかな、雅紀とは普通の友達みたいに遊んだりする感覚がなかったのは。
傍らには荷物番として預かった翔ちゃんのサングラスと雅紀のキャップ。
その黒いキャップをカポッと被ってみて、歓声の上がる空を見上げた。
いいんだ、今日は。
こうやってさ、親友と恋人が仲良く遊んでるのを見るのも悪くないし。
俺にとっては雅紀とここに来れただけで十分。
そう思うだけで何だか胸があったかくなる。
俺って大人になったなぁ…
なんて思っていると突然ビュッと吹いた北風。
「うっ…」
心はあったかくても体は正直で。
はぁ〜っと両手に息を吹きかけて暖をとっていたら、ふいに掛けられた声に肩を揺らした。
「あれ〜?相葉のお兄さん!」
そこには無邪気に手を振りながら近寄ってくるトウマの姿が。
そして少し後ろにはマツジュンも居て。
げっ…!
なんでこんなとこで会うんだよ!
「うわ〜奇遇ですね!もしかして相葉も一緒ですか?ですよね?」
「あぁ、まぁ…」
「いや〜こんなとこで会えるなんてね!なぁ潤」
「……」
テンションの高いトウマとは打って変わり。
ダボついたジーンズのポケットに両手を突っ込んで、いつもの不貞腐れスタイルで無言を貫くマツジュン。
いやそうだろうよ。
なんで休みの日に恋敵に会わなきゃなんねぇんだよって感じだよな。
まぁ"もう諦めついただろう"ってトウマは言ってたけど。
それとこれとは話は別だろ。
絶対に俺のことは嫌いに決まってるじゃん。