煩悩ラプソディ
第45章 流星エピローグ/AN
目は合っていないハズなのにマツジュンからの視線をビシビシと感じ。
居た堪れずに雅紀のキャップを深く被り居住まいを正した時、今度は反対側から声が響いてきて。
「おっ?トウマとマツジュンじゃねぇか!奇遇だなぁおい!」
爽やかな笑みで戻ってきた翔ちゃんと、その後ろで一瞬目を開いた雅紀。
そりゃビックリするよね、俺だって相当驚いたもん。
「なんだよお前らも来てたのか」
「はい!いや櫻井先輩も一緒だったんですね〜!」
目の前で何の障害もなくやり取りされる会話。
なに?こいつらいつの間にこんな仲良くなったの?
つーか鬼みたいな顔してトウマ呼び出してたのどこのどいつだよ。
二人のやり取りの後ろ、ジッと黙っている雅紀にそっと近寄ってキャップをポスっと被せる。
「ね、ビックリしたよね、こんなとこでさ」
「え?あ、あぁうん…」
「…どした?気分悪いの?」
何となくの歯切れの悪さとその顔色に、そんなに今のアトラクションが激しかったのかと思って。
「雅紀?だいじょ…」
「あ、そうだ!せっかくこうやってみんな集まったんだし一緒に回りません?」
雅紀の顔を覗き込んで問い掛けた言葉は、トウマの馬鹿でかい声に掻き消された。
……はっ?
なになに?
一緒に回る?
「おっ、いいなそれ!なかなかこのメンツはないしな!」
「ですよね?いいと思いません?な、相葉!」
突然振られて雅紀が小さく肩を揺らす。
…いやいやいくらなんでもそんなの急すぎだろ。
しかも向こうマツジュンだって居るのよ?
どんな状況なのこれ。
それに今日は俺らの初めてのデ…
「俺は…どっちでも、いいけど…」
ポツリ呟いた声が間近に響いて。
同時にその言葉に自分の耳を疑って思わず雅紀を見た。
……え?
「かずくんは…どう…?」
…ごめん、意味わかんない。
なんでお前がそんな泣きそうな顔してんだよ。
なんで?
雅紀、なんで…
みんなの視線が痛い。
こんなの…
こんなの…俺に拒否権なんかあるワケないじゃん。
「…そういうことかよ」
俺の返事を待つ空気の中、その声は低く静かにそこに留まった。
発したのは、眉間に皺を寄せてトウマを睨みつけるマツジュンで。