煩悩ラプソディ
第45章 流星エピローグ/AN
「…おかしいと思ったんだよ。お前と二人で遊園地なんて」
みんなの視線は俺からマツジュンへと移り、注目されてもなお鋭い目つきでトウマを睨み続け。
「…なんの真似だよ斗真」
「ぁ…いやこれはさ!なんつーかその…潤のためにって思って…」
「は?んなこと頼んでねぇわ。勝手なことしてんじゃねぇよ」
段々と口調が強くなるマツジュンにトウマの顔も曇っていく。
「勝手にって…俺はね、お前がいつまでもウジウジ引きずってるから早く忘れさせようと思っただけだよ!」
「あぁ?誰が引きずってんだよ!」
「お前だよ!全然吹っ切れてねぇじゃんか!」
今にも掴み掛かりそうな勢いでヒートアップしだした二人。
咄嗟に止めに入った翔ちゃんと雅紀の背中が視界に入って。
けれど、まだ状況をうまく整理できていない俺はその場から一歩も動けずにいた。
「おい落ち着けって!トウマだってお前のこと思って、」
「なんでアンタが入ってくんだよ!どうせお前らグルなんだろーが!」
「松潤っ…ちょっと待って、」
白昼の遊園地に似つかわしくない会話が目の前で繰り広げられる。
行き交う親子連れがチラチラと俺たちの方を見ている視線に気付き、ようやく俺の足も一歩を踏み出すことが出来て。
でも、どうしたらいいか分からない。
マツジュンがトウマに食ってかかって。
それを必死に止めてる雅紀と翔ちゃん。
3対1みたいな画になってるけど…でも。
やっぱなんかおかしいよ、これ。
雅紀も翔ちゃんもトウマもおかしいって。
だってマツジュンと俺だけ意味分かってないじゃん。
どういうことだよ…これ。
「離せ触んな!もういいっ!」
一際大きな声でトウマの手を振り払ったマツジュンは。
「…やってられっかよ」
そう言い捨てると、はぁと息を吐き背を向けてずんずんと歩き出した。
そのマツジュンの姿を見て衝動的に体が動きかけたけれど。
俺よりも先に動き出したのは雅紀で。
っ…
「松潤っ!待って!」
俺のこと見向きもせずにその背中を追いかけて行く。
雅紀を無視して歩いて行くマツジュンと二人、段々と遠ざかる背中をただ見つめることしか出来ずに。