煩悩ラプソディ
第45章 流星エピローグ/AN
そのまま身動きが取れないでいたらふいに振り向いた翔ちゃん。
そして盛大な溜息を吐いて頭をガシガシと掻きながら歩いてきた。
「…んだよアイツ」
小さく呟きつつ俺の横を通り過ぎようとしたその腕をガシッと掴んで。
「ねぇ…これなんなの?」
ジッと見つめてそう投げ掛ければ一瞬にしてバツの悪そうな顔に変わり。
「いやその…うまくいくと思ったんだけどさ」
「なにが」
「いやアイツがあんなに拒否するなんて思ってなかったんだよな」
「だからなんのことだって」
「え~っと…」
「説明しろ」
しっかりと腕を掴んだまま詰め寄ると、ようやく観念したのかベンチへと歩き出して。
「お前もだよトウマ」
「あっ!はい…」
存在を消すように黙っていたトウマにも一瞥を投げ、こっちに来るように促した。
***
「…サイテー」
話を聞き終えた後、これ以外の言葉が見つからなくてポロリと吐き出せば。
俺の前に立つ二人は黙って唇を噛んだ。
俺だけ座ってるから端から見たら説教してるみたいに見えるかもしんないけど。
いやこんなの説教でしょ。
だって俺完全に騙されたんじゃん。
いや…騙されたのは俺だけじゃない。
「…知らなかったんだろ、マツジュンも」
トウマを見上げてそう問えばピクっと肩を揺らしてこくんと頷いた。
「…俺が言うのもアレだけどさ、お前マツジュンの気持ちほんとに考えてんの?こんなことされたって嬉しいワケないじゃん」
「……」
「俺と一緒って時点でイヤに決まってんでしょ。俺だってイヤだもん、振られたヤツとその相手とも遊ぶなんてさ」
「いや俺はっ…」
ふいに黙っていたトウマが顔を上げ俺と目を合わせてきて。
「いや…こんなこと言い訳にはなんないんすけど…」
「……なに?」
「多分俺…ヤキモチ妬いてたんです、相葉に」
「…え?」
グッと瞳に力を込めて発した言葉に思わず聞き返してしまった。
…ヤキモチ?
「あれからの潤はなんか…やっぱ違うんすよ。アイツは普通にしてるつもりだろうけど俺には分かる」
ぽつぽつと話し出すと同時にぎゅっと拳が握られて。
「だって俺…一番近くに居るんすよ、ずっと。でも俺は…アイツの望むことは何一つしてあげられない」