煩悩ラプソディ
第45章 流星エピローグ/AN
ラリアット状態でソイツを地面に沈めた背中。
それは紛れもなく。
「…俺のダチに何の用?」
ゆっくりと立ち上がって振り向いた顔は今まで見た中で一番キレていた。
マツジュン…なんで…
地面に横たわったソイツは完全に伸びていて、それを目の当たりにした二人はその場に固まったまま。
「…で?何の用?」
「いやっ…売店、どこかなぁ~って…」
「あっち」
俺たちが歩いて行こうとした反対を指差せば、二人の男は伸びていたヤツを引きずって逃げるように走っていった。
一連の出来事に未だ頭が追い付かず立ち竦んでいると。
はぁと溜息を溢した顔がさっきより幾分か穏やかになった気がして。
その空気にようやく動き出した思考。
「ぁ…ありがと…」
心臓まではまだ落ち着いてなくて、それに付随して声も小さくなってしまったけれど。
それでもマツジュンにはちゃんと届いたみたいで。
でも、その返答は"どういたしまして"とは程遠いものだった。
「あのな、そうやってボーっと歩いてっから絡まれんだよ。警戒心ねぇのかよ」
「っ…」
「大体こんなとこで何してんだよ。トイレなんてどこにでもあんだろーが」
「なっ…」
ポケットに両手を突っ込んでいつものスタイルになったマツジュンから怒涛のように浴びせられる罵倒。
しかもその指摘が的確なだけに言い返したくても何も言えなくて。
くっそ…
助けてもらったのはありがたいけど…
やっぱこいつムカつく!
「だから、」
「もういいって!分かったよ俺が悪いんだろ!」
噛み付くようにそう言い返せば一瞬目を開いて固まったマツジュン。
でも次の瞬間、両頬をぐにっと摘ままれて。
「うっ…」
「…アンタに何かあったら相葉が悲しむだろーが」
「……ふぇっ?」
「ふっ…ひっでー顔」
パッと離された頬はジンジンと痛みが残ったまま。
それと同時に、マツジュンが発した言葉も俺の脳内にリフレインする。
え?今のって…