煩悩ラプソディ
第45章 流星エピローグ/AN
「松潤にさ、ごめんって…嫌な思いさせてごめんって謝ったらさ、怒られちゃった」
「…ぇ?」
「俺なんかに優しくするなって…なに恋人置いて追いかけてきてんだ、って…」
困ったように眉を下げて話す雅紀に昼間のマツジュンの言葉が蘇って。
"アンタに何かあったら相葉が悲しむだろーが"
雅紀に掛けた言葉も俺へのそれも、表には出さないマツジュンの優しさが詰まってるんだと。
今更ながらにそう実感して胸がぎゅっと締め付けられる。
「…俺も怒られた」
「えっ、かずくんも?なんで?」
「…しっかりしろって。相葉のこと悲しませんな、って」
「え?どういう意味?かずくんがなんで俺を悲しませんの?」
はてなマークを貼り付けて俺を覗き込む顔にくつくつと笑いが込み上げてくる。
やっぱり…
やっぱりさ。
まだまだ俺たち…
一緒に居なきゃダメなんだ、きっと。
一緒に居て支え合って。
守って守られて。
「え、なにがおかしいの?俺の顔ヘン?」
「うん、だいぶヘン」
だから…この先離れて暮らす道なんか選んでる場合じゃないじゃん。
ふと星空に目線を遣った先、流れ星がスッと瞬いたのが見えて。
「あ、見た?今の」
「なに?」
「流れ星」
「ウソ!見てない!うわ~願い事あったのに!」
隣で分かりやすく悔しがる雅紀に今度は声を出して笑った。
「俺にゲームで勝てますようにとかだろ、どうせ」
「違うし!そんな幼稚な願い事じゃないし!じゃあかずくんはなに?」
「俺?俺はー…」
"家から通える大学に受かりますように"だよ。
まだ言わないけど。
「あ、分かった。ピーマン食べられるようになりますようにだ」
「は?バカじゃねぇの?つーか食べれるし」
「え、こないだ残してたじゃん」
「あれは食えなかったの!お前がバカみたいに作るから」
…それから。
"こんな毎日がずっと続きますように"
これは願わなくても叶うような気がする。
だってまだ始まったばっかりなんだから。
兄弟として。
友達として。
恋人として。
だから…
俺たちにエピローグはまだまだ必要ないみたい。
end