煩悩ラプソディ
第10章 星に願いを/AN
飲酒運転だったそうだ。
その車に、にのは跳ねられた。
「にのっ…にのっ!」
ガラスを隔てて、にのがベッドに横たわっている。
体中に配線をくっつけて、うっすらと目を開けて俺を見ている。
涙が出た。
止まらなかった。
にのはなにか言おうとしてんのに…
分からない。
なにが言いたいのか。
なにをして欲しいのか。
なにが《一番の親友》だ。
肝心なことは分かってやれないくせに。
にのが今…
なにを言いたいのか分からないくせに…。
「にのっ…ねえっ!」
たった一枚のガラス。
これさえなかったら、今すぐにのの元へ駆けて行って手を握ってやるのに…
にのがしてくれたように、あの子どもみたいな手をずっと握っててやるのに…。