煩悩ラプソディ
第10章 星に願いを/AN
その後、数日間のことはよく覚えていない。
騒動が収まり始めた頃、俺は警察に呼び出された。
あの事件を目の前でしっかり見ていたのは、俺だけだから。
ひと通り話し終えると、一人の警官がこぶし大の袋を持ってやってきた。
『二宮さんの上着に入っていた物ですが…』
躊躇いがちにそう言うと、俺にその袋を渡す。
コートの下に何枚も慎重に着込んで、その袋を手にしたままあの公園へと向かった。
あの時と、同じ時間に。
空は重たい雲を従えて不気味な色を帯び、星なんて見えない。
あの日だけが特別だったんだ。
…あの日だけが。
迷うことなく隅のブランコへと足を運び、低い板に腰をかけ小さな袋を開けてみた。