煩悩ラプソディ
第10章 星に願いを/AN
「俺…にのが…
にののことが…好きなんだ…」
ーーカシャ
耳元で聞こえたその軽い機械音に意識が急浮上した。
体に感じる心地よい揺れの中、うっすらと目を開けると。
「あ、起きた」
「あ〜も〜何やってんだよ、松潤」
笑いを堪えながら俺の目の前でスマホを構える松潤と、残念そうな顔で松潤を咎める翔ちゃんが。
え、なに…?
どういうこと…!?
未だ追いついてこない思考に、目をこすりながら周りを見渡す。
同じ色と形の座席。
窓らしきそれには、カーテンがずらっと掛けられている。
その景色にはっきりと頭が覚醒した。
ここは、夜中の公園でもなんでもない移動中のロケバスの中だった。
「あ…」
先ほどの光景とはしっかりと切り離されたものだと確信し、途端に体の力が抜けていく。
なんだぁ…
夢かぁ…
頭を後部シートに預け、はぁ〜っと思いっきり息を吐いた。