
例えばこんな日常
第12章 まさかの大誤算/AN
「相葉くんそれ次のドラマのやつ?」
全員揃った楽屋はいつもの雰囲気で、定位置で各々の過ごし方をしている。
未だ台本とにらめっこをしていた俺に、ソファの向かいでスマホを弄る松潤が口を開いた。
「んー、そうなんだけどさぁ…」
「なに?つかどんな役だっけ?」
「…男に恋する男、」
「あ~そいえば言ってたね。ふふっ、どうしたんすか?」
「いやさぁ…」
絶対俺の言わんとしてることは分かってる筈なのに、松潤はわざと楽しそうに聞いてくる。
「どうしたらいいか分かんないんだよね…この役」
「まぁね~、相当難しいと思うわ、それは」
「だよね?やっぱ松潤でもそう思うよね!?」
「けどオファー来たんだからさ、やんないとね」
ね?とからかうような満面の笑みを向けられ、一度高揚した気持ちも一気に下がる。
恨めしい視線を松潤に送っていると、コーヒーを片手にソファにやってきた翔ちゃんが話に加わって。
「ちょ、それ見して」
俺の手元にある台本を差しながら『メンバーの台本読むの趣味なんだよね』なんてぼそっと付け足す。
ページを開いてすぐにぷっと吹き出した翔ちゃんに目を遣れば、続けて笑いながら口を開いた。
「これってほぼほぼにのじゃん」
"にの"というフレーズに瞬時に相手役のことかと理解して。
「なに、簡単じゃない。にの相手に練習すりゃいいじゃん」
『どれ?』って翔ちゃんの手元を覗き込む松潤も、笑いながら同意しだして。
「良かったね、こんな近くに練習相手がいて」
にやにやした顔を隠すことなくそう言ってのける。
いや待ってよ…
本気で言ってんの!?
「ちょ、待って待って!勝手に決めないでよ!」
「待つも何もこんな絶好の相手いなくね?」
「俺もそう思う。ねぇにのー」
「ちょ、待って!」
勝手ににのに呼びかける松潤に焦りつつ、テレビ前のテーブル席に視線を向けると。
リーダーとスマホゲームに興じるにのが、『ん?』と言ってチラッとこちらを向いた。
「相葉くんから一生のお願いがあるらしいよー」
口元に手を添えてそう言う松潤に、間髪入れずににのが返してくる。
「お断りしまーす」
「おいこらっ!」
そこは一応突っ込んで、だけどほんとに断られるに決まってる内容だし。
