例えばこんな日常
第12章 まさかの大誤算/AN
「聞くだけきいてあげてくれません?」
「俺達からのお願いでもあるからこれ」
「そう、相葉くんの今後の役者生命に関わるやつだから」
適当なことを言う二人に、笑いながら席を立ってこちらに近付いてくるにの。
「もうさ、お前一生のお願い何回目よ?」
「そこを何とか!先生、どうかひとつ!」
翔ちゃんがわざとらしく手を合わせて『言え』と言わんばかりにこちらに目配せする。
松潤もにやにやして俺を見ていて。
…ほんとに言うの?
眉根を寄せて松潤を見つめ返していると、にのがポケットに手を突っ込んでじっと俺を見ている視線に気付いた。
「…なに?言ってごらんよ」
口をつんとさせてそう言ったにのに、小さい声で答える。
「…今度のね、ドラマの、練習に…付き合って欲しいな、なんて…」
ぽつりぽつり言うと、少し驚いたように目を開いたにのが率直であろう意見を口にして。
「…俺?なんで?」
不思議そうに俺を見つめる瞳に、その先が言えなくて口ごもってしまい。
「俺じゃないとだめなやつなの?」
そう続けた言葉に、もう理由を言わざるを得なくなって。
「いや~…相手役がさ、にのにぴったりなんだよねぇ…」
小さく呟くと増々眉をしかめて『相手役?』とこぼす。
「あ、こちら台本になります」
翔ちゃんがすかさず台本をにのに手渡し、ぱらっとページを捲ったと思ったら一際高い声が届いた。
「…はぁ!?やだよ!絶対やだ!」
笑いながら頑なに拒否され、思った通りのにのの反応に急に恥ずかしくなる。
「ほらやっぱり!だから言ったじゃん!」
「え~俺はにのしかいないと思うけどなー」
「ならJやってやんなよ!色白だし、」
「いや俺華奢じゃねぇもん」
「あ、俺華奢かも、」
「あなた黒いでしょ」
途中で入ってきたリーダーに翔ちゃんが突っ込んで、ぐるっと見渡してまた口を開く。
「…てことで、よろしいですかね?先生」
「いやちょっと…え、ほんとに!?」
目を丸くして問うにのに、みんなはただひたすら笑うだけで。
ふと俺に向けられたにのの視線とばっちりぶつかって、その顔と同じように眉根を寄せた。
ちょっと待ってよ…
マジでっ!?