例えばこんな日常
第12章 まさかの大誤算/AN
「ふふっ、今日散々だったな相葉ちゃん」
相変わらずへらっとした笑みを浮かべながらも、的を射た言葉を発するリーダー。
「にのと全然話さねぇんだもん。ケンカしてんのかと思った」
さらっとそう言うリーダーに、翔ちゃんが『あぁ、あなたはそう思ったのね』とぽつり苦笑いながら突っ込む。
「てゆうかさ、相葉さんも相葉さんだけどノせたあなたたちも悪いと思うよ、俺は」
ソファに座ったまま翔ちゃんと松潤を見上げるように、にのが口を開いた。
「え、俺ら?」
「そうでしょ。本番前にあんなこと言ったら意識しちゃうでしょ、この人」
「あ、それはごめん」
『何年一緒にいんのよ』って付け加えるにのは、もしかして俺のことをフォローしてくれてるんだろうか。
そんなやり取りの傍でコーヒーを両手に持ったまま立ち竦んでいると、松潤が俺をチラッと見て。
一瞬ニッと口角を上げて、衣装のブレスレットを外しながら口を開いた。
「ごめんごめん、それは俺らが悪かったね。
本番前に言うことじゃなかったのは確かだよね」
歩いて上着を脱ぎながら、申し訳なさそうな顔で続ける。
「いや、相葉くんが困ってたからさ、ついね…。
ごめん、俺が余計な事言っちゃったから」
そう言ってる視線はなぜか翔ちゃんに向いていて。
「…や、俺だよ、俺がにのにゴリ押ししたから悪かったんだよ。
にのの意見も聞かないで決めちゃって…ね?智くん」
「んぁ?」
心底申し訳ないといった顔で言いながら、いきなりリーダーに振る翔ちゃん。
振られたリーダーは間抜けな声を出したけど、訳も分からず頷いてるように見えて。
「ほんとは俺が協力してあげたいくらいなんだけどさ…いかんせんビジュアルがさ、」
「そう俺も。色は白い方だけど華奢じゃねぇもんな…」
ねぇ?とがっかりしたような顔で見合わせる翔ちゃんと松潤に、ようやく二人の魂胆が見えてきた。
やっぱり…
どうしてもにのを相手役に役作りさせようとしてる…!
ちらり横目でにのを見れば、眉根を寄せてじっと何かを考えるように黙ってて。
その視線がふとこちらに向いて、思いがけず目が合って何となくどきっとした。