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例えばこんな日常

第12章 まさかの大誤算/AN






「…相葉さんさ、」


俺と目を合わせたまま、小さく俺を呼ぶ。


「…その役ほんとに受けるの?」


にのの意外な言葉に、思わず『えっ』と変な声が出てしまった。


「大丈夫なの?そうゆうの、」

「…大丈夫って何が?」

「だからさ、男とそうゆうことすんのとかさ、」


俺を見上げながらそう言うにのの目は、心配そうに翳っていて。
長年の付き合いで俺のことを熟知してるにのには、今回のこの役は俺にはキツイと受け止めたんだろう。


大丈夫かなんてわからない。


だから悩んでるんだ。


だから、にのに…


と、いつの間にかにのに役作りを協力してもらう思考になっている自分に気付いてハッとした。


…でも、待って。


にのに相手役になってもらって…


それで大丈夫かどうか試すのもアリ、かな…


「…どうしてもって言うなら、」


ぐるぐる考えていると、下からぽつりと声が聞こえて視線を落とす。


「お前がどうしてもって言うならやるけど…」


ちらっと一度こちらを見上げて、すぐに目を逸らすにの。


よく見ると、髪で少し隠れた耳がほんのり赤くなっていて。


…え?


「あっ、にのさっすが!やっぱ相葉くんの一番の親友だよなぁ!
良かったな、相葉くん!」

「ほんとだわ、こんな近くに抜群の相手がいて良かったよねぇ」


耳聡く聞いていたらしい二人が急にソファに向かってきて、満面の笑みで俺達を囲い込む。


『わざとらしいのよ』と言いながら眉根を寄せて照れ臭そうに笑っているにのを見て、ようやくこの状況が飲み込めたような気がした。


「え…いいの?ほんとに、」


改めて聞くと、また耳がふわっと赤くなって口を尖らせて。


「仕方ないじゃん…俺しかいないんでしょ?」


そう言われると全くその通りで、ただ頷くしかなく。


そんな俺をにやにやした顔で見つめる翔ちゃんと松潤の後ろで、多分よく分かってないだろうリーダーも一緒ににこにこしてて。


まさか、にのが受けてくれるとは思ってなかった。


さっきは勝手に意識しすぎて変な感じになってたけど、改めて"にのが相手役"ということを思い直すと途端に恥ずかしくなってくる。


だけど、やるしかないから。


まだ知らない自分を、にのの力を借りて引き出せるように。


…って俺、ほんとにできんのかな?

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