例えばこんな日常
第12章 まさかの大誤算/AN
「だからさ、確認させてほしいの。俺も相葉さんのこと好きになんないといけないからさ、」
気だるそうに言うにのは、多少酔ってるせいか目元を赤く染めて瞳を潤ませていて。
さっき一瞬見た表情とダブって、何となくおかしな感覚になる。
「確認って…?」
「いや、だから…ちゃんと相葉さんにどきどきするかどうかをさ…」
言いながら、恥ずかしいのか目を伏せて口をつんと尖らせて。
そんなにのの仕草や表情には、今までも普通に"可愛いな"と思ったことはあった。
だけどそれは、にのの持ち味や容姿が手伝ってのことで、その感情に特別な意味なんてなかった。
でも、なんだろう。
にのを意識しだしてから、にのを好きになろうと心掛け始めてから、自分の中で何かが芽生えたような気がしてるんだ。
さっきのおかしな感覚も、妙な緊張感も。
これってもしかして…
「…相葉さん?」
考え込んでしまっていた俺を窺うように覗き見る顔の近さに、思わず後ろに引いてしまう。
「…ちょっと、誰の為にやってると思ってんのよ。
いつでも辞めたっていいんだから俺は、」
「あっ、違う違う!ごめん、いやちょっとびっくりして…」
眉根を寄せて文句を言うにのに慌てて謝って、さっきのにのの言葉を思い出す。
「えっと、確認…ってどうゆうこと?」
「だから…俺がね?相葉さん相手にきゅんってなるかどうかを確認したいの」
「きゅん…」
「そう。つぅかお前も俺にきゅんってなんなきゃいけないんだからね?」
腕を組みつつ指を差され、思わず背筋を少し伸ばした。
きゅんか…確かに。
さっき巡らせていた思考はもしかしたらの話で、まだ"好き"という想いとはイコールじゃないかもしれない。
俺もにのにきゅんとできたら、きっと自分に芽生え始めた感情を確信できるんじゃないか。
だから確かめないと、か。
「…で、どうやって確認すんの?」
ぽつり訊ねると、にのの耳が一瞬でさあっと赤くなって。
「うん…まぁ、とりあえず…くっついてみる?」
耳を赤くしたまま、ちらりこちらを一度見上げてまた目を逸らす。
そんなにのを見ていると、俺も妙に恥ずかしくなってきて。