例えばこんな日常
第14章 純情ではもう遅い/OM
途端にむくむくと反応しだす俺の自身。
えっ!ウソだろっ!?
そう思ったのも束の間、異変にいち早く気付いたらしい大野さんがゆっくりと俺に振り返る。
「…どした?」
「いやっ!何も…」
「…お前もしかして、」
「ちがっ!違いますっ!」
思わず股間を両手で押さえながら弁明して。
「どこ押さえてんだよ」
「あっ、いやその…」
「…ふぅん」
その瞬間、大野さんが余計なことを思いついた時の顔をしたのが分かった。
跨ったまま焦った顔を隠せないでいると、ゆっくりと大野さんが体を起こそうとして。
慌てて飛び退けば、くるっと反転して再び芝生の上に体を沈める。
「じゃあ…乗って?」
仰向けになった大野さんが俺を下から見据え、ふにゃりといつもの笑みを湛えた。
「はっ?えっ、ちょ…!」
驚く間もなく腕を取られ、膝立ちだった俺はよろめきながら大野さんの上に跨る形になり。
視界に広がるのは大野さんの綺麗な笑顔と、前が肌蹴たシャツ。
その見え隠れする鎖骨や、華奢な肩口がダイレクトに目に飛び込んできて。
そしてこの有り得ない体勢に、また自身が反応していくのを自覚する。
やっばい…!
「なぁ松潤てさぁ…もしかして俺のこと好き?」
ふいのその言葉に、掴まれたままの腕がじんわり熱くなる。
「だからめげずに俺のパシリやってんの?」
下から窺うように続ける大野さんは、全てを見透かしたような余裕の表情で。
「…なんも言えねぇの?図星?」
「…っ、」
「ふふっ…そうなんだぁ」
言い当てられて黙ってしまった俺を見て、楽しそうに目を細める。
大野さんへの想いをこんな形で表してしまったことに、大きなショックが募って。
…やっちまった。
完全にバレてしまっ…
「っ!?」
急に視界がぐんと狭まったことに驚き、咄嗟に両手を芝生につく。
そこにあるのは、至近距離で俺を見つめる大野さんの綺麗な瞳。
胸倉を手繰られ引き寄せられた格好で、息が掛かる程の距離で囁かれた言葉は。
「…キスしてみる?」
そのあまりにも妖艶な声のトーンに、思考が吹っ飛んで目を見開いたまま固まってしまった。