例えばこんな日常
第16章 憧憬モノローグ/AN
「…じゃあさ、俺も聞いていい?」
声色は優しいけど、見つめてくる瞳が射抜くように強くて思わず身構えた。
「なんでにのはそんなに可愛いの?」
「…えっ?」
「どうしたらさ、そんなに可愛くなれんの?」
「えっ、なに…」
「教えてよ、なんでそんなに可愛いの?」
「か、かわいくな、」
「可愛いよ、にのは」
被せるようにそう告げられ、恥ずかしさで顔が熱くなる。
「…わかんないでしょ?自分のことなんてさ。
俺だってわかんないよ」
『わかった?』と笑いながら顔を覗き込まれて、ますます顔に熱が集まってきて。
「俺はそのままのにのでいいと思うけどね。
すごくいいと思う、今のにのって」
言いながらカットを再開する相葉さん。
怒涛の可愛い攻撃の中で、なんか今さりげなくすげぇ嬉しいこと言われたけど。
相葉さんに、そのままでいいと思うって言われたけど…
いやでも、今の俺のままで相葉さんに近付けるわけがない。
俺は…相葉さんみたいになりたいんだ。
チラッと目を上げればニコッと微笑まれて、目尻の皺が一層刻まれる。
「…相葉さん」
「ん?」
「あの…お願いがあるんですけど…」
「うん?」
「相葉さんのその…着てる服とか、どこで買ってるか…教えて、もらえませんか…?」
唇を噛み締めて途切れ途切れに伝えると、またふふっと笑みを溢しながら手を動かす。
「だから言ったじゃん。にのはそのままでいいんだよって」
「違うんですっ、そうゆうことじゃなくて…」
「じゃあどうゆうこと?」
「それは…」
いきなり"相葉さんみたいになりたい"なんて言ったら、きっと笑われるよね。
こんな俺がそんなこと言ったって、引かれるに決まってる…
「…じゃあさ、今度一緒に行く?」
「っ、えっ?」
「俺の行く店、知りたいんでしょ?」
「え、あっ…はい!でも、いいんですか…?」
「いいよ。そんな目で訴えられたら断れないもん」
そう言って笑いながらクロスを外された時、微かに相葉さんの香水の匂いが鼻を掠めて。
こうゆうのも全部…教えてもらえるのかな。
相葉さんのことたくさん知れるチャンスが、こんな形で舞い込んでくるなんて。
どうしよ…嬉しすぎるっ…
思い切って訊いてみて良かった…!