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例えばこんな日常

第16章 憧憬モノローグ/AN






それからは、ただただ腰巾着のように相葉さんに付いて回った。


入る店はそんなに高級そうじゃなくて、むしろ気軽に入れるような感じで。


だけど、置いてある一点一点にさり気ないオシャレが散りばめられていて、どのアイテムも相葉さんに似合いそうなものばかり。


こんなカッコいい店で相葉さんは買い物をしてるんだ、とワクワクしてたのも束の間のこと。


「にの、次これ着てみて」

「あっ、はい…」


さっきから代わる代わる洋服を渡され、試着をしては『いいね!可愛い!』とキラキラした瞳で相葉さんに言われ続けてて。



…こんなはずじゃなかったんだけどなぁ。


もっと相葉さんの服の趣味とか、小物のこととか、いっぱい訊きたいことあるのに。


むしろ相葉さんに色々着てもらって、カッコいい相葉さんをたくさん見たかったのに。


これじゃあまるで…


ただの着せ替え人形じゃん…。



そんなことを思いながら、鏡に映る自分をしかめっ面で見つめつつ薦められたシャツを脱いでいると。


「ねぇ、それ超似合ってるからさ、プレゼントしたげるよ」


カーテン越しに相葉さんの楽しそうな声が聞こえて、思わず自分の耳を疑った。



えっ!?
プレゼントっ…!?



慌ててカーテンの端からひょこっと顔だけ出してみれば、待合の椅子に座る相葉さんが目を上げて。


「プレ、プレゼントって…俺にですかっ?」

「くふふっ、そうだよ。もう、なにそれ、可愛すぎ」


長い脚を組み、破けた膝に両手を組んで微笑んでくる相葉さん。


「早く着替えな。そろそろ腹減ったし」


そう言うと、立ち上がってにっこり笑いながらカーテンを閉められた。



心臓の高鳴りが抑えられない。


相葉さんに…


相葉さんに選んで貰った服を…


プレゼント…されるなんて。


どうしよう…


もう、嬉しすぎるっ…!



いそいそとボタンに手をかけながらふと鏡を見れば、自分でも分かるほど顔が赤くなっていて。


このままここを出る訳にはいかないと思い、緊張で冷たくなっていた手をぺたぺたと頬に擦り付けて何とか落ち着かせた。

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