例えばこんな日常
第16章 憧憬モノローグ/AN
昼食も、相葉さん行きつけのお店に連れて行ってもらうことになり。
訪れたそこは、小洒落たオープンカフェで。
店員さんともすっかり顔見知りらしく、相葉さんがいつも座る席に通された。
オープンカフェなんてもちろん初めて。
こんな通りに面した場所で、落ち着いて食事なんてできるんだろうか。
目の前には、頬杖をついてメニューを眺める相葉さんがいるし…
もう何もかもが俺にとっては未知過ぎて、ずっと心臓がどきどきしっぱなしなんだけど。
「にの決めた?」
「ぁ、えっと…相葉さんと、おんなじので…」
いくらメニューを見たって、この緊張の中食べたいものなんて正直言って無いから。
とりあえず無難に相葉さんと同じものを、と思ってそう言ったつもりだった。
でも…それは大きな間違いだったみたい。
出てきた巨大なハンバーガーを前に、思わず固まってしまって。
「うわーうまそっ。いただきやす!」
満面の笑みで手を合わせ、躊躇うことなくハンバーガーに喰らいつく相葉さん。
「…にの、食べないの?超美味いんだよ、これ」
頬いっぱいに詰め込んでもぐもぐしながら投げかけられ、我に返ってその巨大ハンバーガーと向き合った。
出来るだけ大きな口を開けて齧り付くと、相葉さんが期待に満ちた眼差しで見つめてくるから。
「…おいしいです」
「でしょ~?」
圧されるように頷きながらそう答えれば、途端に目尻の皺が深くなる。
勢い良く頬張るその食べっぷりに、なんだか相葉さんの新しい一面を垣間見れたような気がして勝手に嬉しくなった。
結局半分しか食べられなかった俺のハンバーガーは、まだ余力のあった相葉さんの胃袋へと消え。
食後のコーヒーにちびちび口を付けていると、ふいに相葉さんが口を開いた。
「にのさぁ、この後も大丈夫なの?」
「えっ、あ、はい!もちろん…」
「じゃあさ、俺んち来る?」
「……へっ?」
「いや、にのに似合いそうな服確かあったなぁって思ってさ。もう俺着ないやつだからあげようかなって」
「……」
「…あ、要らない?」
「いえっ、要りますっ!く…くださいっ!」
必死にそれだけ伝えると、相葉さんがまた目を細めて笑った。
うそでしょ…
相葉さんちに…
行っていいの…!?