
例えばこんな日常
第19章 ピンクのカウボーイ/AN
行為の後すぐに『あっつい!』と言いながらパーカーを脱ぎ捨てたにの。
多分ずっと脱ぎたかったんだろうな。
けど、俺が着ててほしいって言ったから。
なんだかんだで俺の言うことは最後まで聞いてくれるんだ。
「つぅかさ、あれ相葉さんが着るんじゃなかったの?」
さっきまでの淫らなムードはどこへやら。
行為を終えて後処理を済ませた俺たちはリビングで晩酌に耽っていた。
「え、なんで?」
「なんでって、だから買い取ったんじゃないの?
サイズ的にも相葉さんにぴったりだし」
ぽいっと柿ピーを口に放りつつビールを煽るにの。
「俺が着たってしょうがねぇじゃん。
あれはにのだからいいんだよ」
「なんなのそれ」
「あれはにのに買い取ったの。
だってすっげぇ似合ってるし可愛くない?」
「…ふぅん」
顔を覗き込みながらそう言うと、興味無さそうにくいっとビールを煽って。
けど、心なしか染まった頬は見逃してなんかいない。
「…またあれ着て上に乗ってね」
「やだよバカ」
「たまにやろ、ああいうの」
「やだやんない」
『あっちいし』とボヤキつつ空になった缶を持って立ち上がったにのに、押しの一手。
「ああゆうの俺すっげぇ興奮すんだよね」
ぽつり呟けば、一瞬ぴくっと肩が動いたような気がして。
「…バッカじゃねぇの」
言い捨ててキッチンに足を向けたにのの耳が、さぁっと真っ赤に染まったのを見届けて内心ガッツポーズ。
俺の言うことは何でも聞いてくれる、そんなにの。
俺から仕掛けたことだって、嫌がりながらも結局受け入れてくれて。
そして、俺の想像を遥かに超える姿にいつだって翻弄させられる。
今回も俺は、にのに完全に乗りこなされたわけで。
そんな関係も悪くない。
いや…
それが俺たちのカタチってことで。
いいでしょ?にの。
end
