
例えばこんな日常
第20章 ためいきデイドリーム/AN
何がどうなってこうなったか、まだ頭ん中を整理できないでいる。
男の一人暮らしとは思えない程きれいな部屋の中心で、思いっきり居心地の悪さを感じながらちょこんと正座をしている俺。
しかも遠くから聞こえるザーッというシャワー音が、より一層ソワソワ感を増長させてくる。
ローテーブルには、途中のスーパーで買ったお惣菜とビールが入った袋が無造作に置かれてて。
きょろきょろと部屋を見渡せば、そこかしこに知らない相葉さんの欠片が散りばめられていて胸が熱くなる。
浮いては沈んで、いや…浮きそうになっては無理矢理沈ませてた想いを。
こんな状態になった今、一体どう引き返せと言うんだろう。
ただ単に相葉さんは、昨日のお詫びのつもりで俺を自宅に招いてるんだろうけど。
そう…
"ただの友達"になる第一歩として。
だけど俺にとってはさ、こんなの…
もう今にも心臓が破裂しそうなくらい苦しいんだよ。
もやもやした気持ちが肺いっぱいに広がって、息もまともにできないくらいに。
もうそんなとこまで来てるんだ、俺の想いは。
傷付くかもしれないって分かってんのに。
その怖さより、そんなものなんかより。
相葉さんに気持ちを伝えたいって。
今までの恋愛とは何かが違うって、相葉さんから連絡が来ない間ずっと思ってたんだ。
こんなに本気で人を好きになったのは、相葉さんが初めてだから。
だからもう、どうなってもいい。
伝えたい、どうしても。
相葉さんのことが好きです、って…
「あーさっぱり!あれ?何そんなとこ座って」
フローリングをペタペタと歩いてきたその声に我に返り、ラグに正座したまま後ろを振り返ると。
風呂上がりのほっこりした相葉さんの姿が。
首からタオルを下げて、Tシャツに短パンというラフな普段着。
いつもスーツで決めた相葉さんしか見たことなかったから、その余りにも普段とかけ離れた姿に目を逸らせず固まってしまった。
「ごめんね、とりあえずひとっ風呂浴びたくて。
ほら、もうちょっとこっちおいでよ」
目を細めながら隣に腰を下ろしてくる相葉さんから、ふんわり石鹸の香りがしてカーッと体が熱くなる。
