
例えばこんな日常
第20章 ためいきデイドリーム/AN
相葉さんは、ついさっき見た情けない顔をしている。
なに?なんで?
なにが"良かった"なの…?
未だ整理できないこんがらがった頭ん中は、ぐるぐると出もしない答えを探そうとしてて。
ただぽかんとした顔で相葉さんを見つめていると、情けない顔が段々と緩まって目尻に皺が出来た。
俺の大好きな相葉さんの笑顔。
こんな至近距離で見たのは初めてで。
その距離感に今更になってどきどきし始めてしまう。
「…それってさ、そうゆうことでいいんだよね?」
期待に満ちた瞳でそう投げかけられても、一瞬何のことか分からず躊躇っていると。
「…俺も好き」
言いながらにっこり笑いかけられて、その短い言葉を理解するより先に目の前が揺れた。
「っ…!?」
「はぁ…勘違いかと思った」
耳元でダイレクトに聞こえる声と、さっきとは比べ物にならないくらい近くで香る石鹸の匂い。
ぎゅうっと込められる腕の中に倒れ込むように収まってしまったまま、頭も体も爆発しそうに熱くなってきて。
なっ、なになになにっ…!?
なにこれうそでしょ!?
いやそれよりあいばさ…
「もしかしてって思ってたんだよね、ずっとさ」
バクバクと鳴る心臓が鼓膜に響く中、切り取ったように聞こえてきた相葉さんの声。
「毎朝気になってたんだけどね、なかなか声掛けらんなくって。
やっとタイミング良く名刺渡せたと思ったんだけどさ、全然連絡来ないからやっぱ違うかって思ってた」
くふくふと小さく笑いながらしみじみ話してるけど、それってつまりさ。
「また今回も俺の勘違いかぁって思ったんだけどさ…どうしても諦めきれなくって。
だからさ、ほんと…っ、あ!」
そこまで話して急に上がった声にびくっと肩を揺らす。
そしてぐいっと体を離され、肩を掴まれたまま顔を覗き込まれて。
「俺のこと…好きだよね?」
そんな窺うような瞳で今更そんなこと確認されたって。
言わせなかったのは相葉さんでしょって言いたいけど。
でもそんなのもういい。
俺も…
相葉さん、俺も…
「ずっと…好きでした…」
ちらり目線を合わせて精一杯そう伝えれば、俺の大好きな笑顔が一瞬映ってまたすぐに視界が揺れた。
