例えばこんな日常
第24章 動機不純100%/AN
ぼんやりと揺れる視界。
イマイチよく見えなくて頭を振って目を凝らす。
…ん?
あれ…これもしかして…
ぼやーっと靄が晴れていくように目の前に映し出された映像は。
っ!にのっ…!
真下から俺を見上げるにのの顔と。
辺り一面に広がる真っ白なシーツ。
その真っ白さが眩しくて思わず一度目を閉じると。
「…相葉さん」
やけにその声が耳の傍で響いたかと思えば、首筋に触れた肌の感触。
目を開けた時には、さっきより更に近付いた潤んだ瞳が俺を見据えていて。
「…早くシようよ、相葉さん…」
首に回された腕にきゅっと力がこもり、囁かれたその言葉に。
一気に頭に血が上ったような感覚になった。
…いやこれは夢だよ。
そう夢なんだって。
また変な夢見ちゃってるじゃんか。
どうしてくれんだよにの。
…って。
ジイっと見上げてくるその瞳に吸い込まれそうで、流されてしまいそうで。
夢のくせに後頭部をさわさわと擽る指の感触とかやけにリアルなんだ。
それにこの真っ白なシーツに沈んだ真っ白なにのがどうにも…
…ん?
ふとあることに気付いた。
…今日は体もにのだ。
え?うそ?
「ねぇ相葉さんってば…」
また下から聞こえた声に目を遣れば、そこには眉を下げてうるうるさせたにのの薄茶色の瞳。
そのシャープな顎から伸びる首筋、鎖骨、胸板…
そこには紛れもなく男のまんまのにのの体。
「っ、いやっ!ちょっとタンマ!」
慌てて飛び退こうと上体を起こした時、信じられない力で腕を引っ張られて。
「うわっ!」
堪らずにのの体の上に乗っかってしまって、これまた慌てて顔を上げようとしたら。
ぎゅうっと背中に回された腕。
ぴったりくっついたお互いの耳たぶ。
密着した胸板から伝わるリアルな心音。
「いいじゃん…シよ?」
ほっぺたに触れる唇から発せられたそんな囁き声に、頭も視界も真っ白になった。