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例えばこんな日常

第24章 動機不純100%/AN






「…なにが面白いの?」


にのの声が聞こえて目を向ければ、半笑いながらチラッとこちらを見上げる瞳とぶつかった。


っ…!


その瞳がやけにうるるんとしていてキュッと下半身に力が入る。


こんなにのの表情なんか腐るほど近くで見てきたっていうのに。


マジであんな夢見ちゃったせいでいちいち反応してしまってんじゃん!


「…ん?何が?」

「いやそれ。なんか書いてあんの?」


あくまで平静を装って返してるつもり。
にのも特に普通に話し掛けてくるからきっと大丈夫。


大丈夫、大丈夫…


「見して」


言いながらじりっと距離を詰めてきたにのに、思わずソファに後ずさってしまい。


あ、やっば…


その瞬間、笑っていたにのの目の色が変わって。


くっと刻まれた眉間の皺と、明らかに尖った唇。


いや今のはまずかった。


これじゃまるで『近寄るな』って言ってるようなもんだよね。


「ぁ、いや…別に何も書かれてないって!
ちょっと思い出し笑いっていうか…」

「…へぇ、どんな?」

「えっと…こないだのロケで澤部がちょー面白かったからさ、」

「……」


必死ににのに弁解するけどなぜかその内容には食いついてくれなくて。


眉間に皺を寄せてじいっと見つめられたまま、頬が引きつって動けないでいたら。


「そう…良かったね、楽しかったみたいで」


そう言ってにこっとわざとらしい笑顔を向けた後、ふいっとスマホに視線を落として指を動かし始めたにの。


そのいかにも不自然な振る舞いが気になる。


いや、そうさせたのは俺か。


にのはこんなことで怒るようなヤツじゃないのは分かってんだけど。


何しろ俺は今、自分を見失ってる状態。


これって大丈夫?
にの怒ってんの?
ねぇどうなの?


って今すぐにでも聞きたいところだけど、にのにどんな風に話し掛けたらいいかほんとに戸惑ってる。


にのの行動や言動に勝手に振り回されてる俺。


…これはかなりしんどいことになりそうな予感。

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