例えばこんな日常
第24章 動機不純100%/AN
リハ中もチラチラ視界に入るにのの姿に気が気じゃなかった。
フォーメーションで俺が後ろになったらずっと視界に入ってるし。
前に出たら出たで大きな鏡に映し出されるから嫌でも視界に入ってきちゃうし。
動いてるにのを見るのがこんなにもしんどいなんて。
だって、Tシャツ越しの背中もぷにぷになお腹も。
細い脚や腕が纏わりつくしっとりした感触も。
小さいお尻とその前についた…
とにかくにのの全部を俺は知ってんだから。
夢の中で。
そんな俺の知ってるにのが頭から離れてくれないから、せっかく覚えた振りも押し出されるように忘れていってる気がしてならない。
今日はいつもの百倍は疲れた気がする…
早いとこ帰ってとりあえず熱い風呂に入りたい。
そしてビールで何もかも洗い流してしまいたい。
「お疲れー」
「じゃあねー」
リハを終えて各々帰っていくメンバーに軽く手を振って、出遅れを取り戻そうと急いで帰る支度をしていた時。
いつもはすでに居ないヤツの姿がふと視界に入って。
誰よりも早く帰宅するはずのにのが、まだソファの近くでごそごそと支度をしていた。
今日は極力にのと近付かなかった。
にのから話し掛けてくることはあっても俺からは一度も話し掛けなかったし。
いやそうでもしないと…
にのがそこに居るってだけで下半身が反応しそうなんだもん。
ねぇ俺ってどんだけおかしいの?
夢の中のにのにどんだけ墜ちちゃってんだよって呆れるわ。
考えれば考えるほど自己嫌悪に陥りそうで、同時ににのに申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
…ほんと早いとこ帰ろう。
最後くらいちゃんと挨拶しなきゃな。
リュックを肩に掛けながらにのに声を掛けようと振り向くと。
「っ…!」
意外と近くに居たその存在に驚きが声にならず。
またも肩を揺らしてしまった俺を見上げるうるるんとした瞳。
未だヘアバンドをしたままのおでこは相変わらずつるんとしていて。
じっと見つめてくる瞳がふっと逸らされた後、小さく開いた薄い唇がぽつりと発した。
「…今日相葉さんち行こっかな」
「……えっ!?」