例えばこんな日常
第24章 動機不純100%/AN
そーっと中に入れば、真っ暗な部屋の中。
カウンターキッチンの傍の小さな窓から薄く入ってくる街の灯。
ぼんやりと見えるリビングのソファに、丸まった小さなかたまりを認識して。
その姿にさっきの夢がリフレインしてくる。
しかもソファだったし…
にの酔っぱらってたし…
やっべー…
未だ落ち着かない下半身と心臓。
加えてすぐ傍ににのが居るって思うと、とんでもなく罪悪感が募ってくる。
罪悪感…もあるけど、なんか…
ちょっと背徳感っていうか。
絶対やっちゃいけないことしちゃってバレるかバレないかのスリル感っていうか。
…いや俺マジでなに言ってんの?
こんなの罪悪感のかたまりに決まってんだろが!
ていうかいい加減鎮まれよ俺のジュニア!
冷蔵庫の前、音を立てないように太腿をグーパンチしながら自分を戒める。
そんなことをしても全然治まらない熱。
とりあえず冷蔵庫から水のペットボトルを取り出し、薄く長く息を吐いて。
…バカだ俺。
最低最悪だ、ほんと…
寝室に戻ろうと一歩を踏み出した時、キッチンのフローリングがミシっと音を立てた。
シンと静まり返っていたリビングにまぁまぁ響いたその音。
思わず息を止めて体を強張らせたけど、ソファのにのはどうやら身動ぎひとつしていない様子。
それにホッとしたのも束の間、見過ごせば良かったのについつい見てしまった向こう側。
このまま様子を窺わずに戻ろうと思っていたのに。
暗闇に目が慣れてきたせいか、さっきよりくっきりと見えるソファのかたまり。
そこそこ大きめのソファに丸まって収まるにのの寝姿。
どくどくと早まる心臓と興奮冷めやらぬ下半身を引き連れて。
足音を立てないようにそーっと近付いた。
右腕を枕にしてすやすやと眠るにの。
タオルケットを掛けた肩はゆっくり上下し、微かに寝息が聞こえてくる。
シンと静かな部屋にはにのの寝息だけが存在していて。
だけど俺の鼓膜には尋常じゃない程の爆音が響いてる。
それに逃れようのないこの火照り。
穏やかに眠るにのを目の前に、どうしようも出来ずただただ息を潜めて見つめるしかなかった。