例えばこんな日常
第24章 動機不純100%/AN
その時。
急にもぞっと動いた目の前のかたまり。
っ…!
突然の動きにビクッと肩を揺らし、弾みで持っていたペットボトルをラグに落としてしまって。
やっ…
「……ん、」
微かに聞こえたその声に中途半端に屈んだ状態でフリーズしてしまった俺。
そうして薄く目を開けたにのとバッチリ目が合い。
目が、合って…る?
よく見えていないのか虚ろに開けた目は焦点が定まっていないようで。
それならばと、そろりと後ろに下がろうとしたら。
「…あいばく…」
掠れた声で名前を呼ばれ、またその場でフリーズした。
ごしごしと目を擦る仕草に見入ってしまっている内、もぞっとタオルケットから伸びてきた腕。
「…あいばく…きて…」
今度はしっかりとこちらを見ながら、更に伸ばしてきた手で右手首を掴まれて。
はっ?えっ?
そのままやんわりと引っ張られ、ソファの傍に座り込む形になった。
いきなりのにのの行動にプチパニック状態。
え?え?
これって夢じゃないよね?
現実だよね?
頭ん中こんがらがってるけど、確かに手首に感じるにののあったかい手の平の感触。
これは紛れもなくリアルなもので。
じゃあこの状況は一体どうゆうこと?
訳が分からないままその場にへたり込んでる俺に、畳み掛けられたにのの言葉。
「んふ…おれの…あいばくん…」
青白く浮かんでいたにのの頬が、そう言い終えてふんわりと赤く染まって。
蕩けるようなうるるんの瞳で見上げられながら、きゅっと手首を掴む手に力が込められる。
…え?
なに?
俺の…?
そんな瞳でたっぷりと見つめられても、突然のにののセリフに上手く頭が働かない。
ちょっと待って…
コイツ…
寝惚けてんの…?
「えっと…にの、」
「…ねぇ」
「え?」
「あいばくん…」
更にくいっと手首を引き寄せられ、頬を両手でやんわり包まれて。
そのリアルな柔らかい手の感触にどくんと疼く体。
そして。
「だいすきー…」
「っ!」
嬉しそうに目を細めたにのの顔が近付いてきて、夢と同じ柔らかい唇が押し当てられた。