例えばこんな日常
第24章 動機不純100%/AN
夢の中のにのと全く同じその感触。
触れているだけなのにめちゃめちゃ柔らかくて。
突然のにのの行動に驚きつつも、さっきの夢の続きなんじゃないかって錯覚してしまうほどに。
頰を包まれたまま数秒、リアルなその感触にただただ浸り続けて。
ヤバい…
にのっ…
ドクドクと高鳴る心臓とムクムクと勢いを増しそうな下半身。
それに後押しされてしまい、触れているだけだったにのの唇にぐっと自分のを押し当てた時。
「んっ…」
声にならない声が小さく聞こえたかと思えば、急に頰を包まれていた手に力がこもり。
「っ、へぇっ!?」
素っ頓狂な高い声を出すにのに、ぐいっと唇を引っぺがされて。
ガバッと体を起こし、口元を押さえながら目を丸くして俺を見る瞳。
その信じられないって顔に、俺も急に焦り出してしまって。
「…いやっ、待って!お、お前だからなっ!?
にのからしてきたんだから!」
「はっ?うっそつけって!そんなことっ」
「違うって嘘じゃない!信じろってば!」
「っ…」
俺のあまりの必死さににのも言葉を呑み込んだ。
…いやアクセル踏みそうになったのは確かだけど。
今のは俺じゃなくてにのからだから!
ソファの隅に後ずさっているにのを真っ直ぐ見つめると、うるうるした瞳が所在無さげに彷徨って。
薄暗がりでも分かるほど赤く染まった耳たぶ、頰。
それを隠すようにおでこからべろんと顔を撫でる仕草。
そしてはぁと溜息をついて俯く尖った口から、やっと聴き取れるくらいのか細い声が届いた。
「…なんか言ってた?俺」
「え?あ…」
「…言ってたでしょ。なんて言ってた?」
「あ…それは…」
上目遣いでちらっとこちらに視線を寄越したにのの言葉に、キスの前に言われた寝言を思い返す。
……えっと。
思い返したはいいものの、俺が言うのはかなり恥ずかしい内容な気がする。
でもここで言わなきゃ俺が疑われちゃうよね?
そりゃ夢では好き勝手やってたけど現実で仕掛けてきたのはにのの方なんだから…!