例えばこんな日常
第24章 動機不純100%/AN
「えーっと…
俺の…相葉くんって…」
「っ!」
「あとはその…
大好き、って…」
「……」
ラグに正座した状態でにのを見上げながらそう伝えれば、見たことないってくらい目を見開いて絶句するにの。
数秒固まったあと、きゅうっと小さく体を縮こませ両手で顔を覆って。
「うわぁ俺…」
ぽつり溢したその声色で、この内容がにのにとって身に覚えのあることなんだと悟った。
だってにのなら、どんなこと言われたって上手く切り返せる頭の回転を持ってるはず。
でもそれが。
目の前でこんなにも恥ずかしそうに小さくなってるだけだなんて。
そんなにのの仕草に、鎮まりかけていた熱がフツフツと湧いてくる感覚に襲われ。
ゆっくりとラグから立ち上がり、顔を覆うにのの傍に腰を下ろした。
「…にの」
「わかってるよ。優しいから…相葉さんは」
未だ顔を覆ったまま、くぐもった声で俺の呼びかけを遮る。
「こんな感じになってんの…ほんとは困ってんのに」
「……」
「優しいんだよ…相葉くんは…」
「…にの、」
「やめよ、ごめん。今のナシに、」
「にのっ…」
パッと顔から離したその手を捕まえて、ぐいっと俺の方に体を向かせた。
顔中を真っ赤に染めたその表情は今にも泣きそうに歪んでいて。
その潤ませた瞳は夢の中のような艶っぽさは無く。
心の底から、本能的に守ってあげたくなるような儚い眼差しで。
…あぁ、こういうことか。
これが"本物"のにのなんだ…
「…なんでナシなの?」
「…ぇ」
「俺はアリなんだけどダメなの?」
「なっ…」
柔らかくて丸っこい手をぎゅっと握りながらそう伝えれば、ぴくっと肩を揺らして言葉を無くすにの。
「俺にのは全然アリ。大アリ」
「っ…そういうっ…」
「なんで?変?」
「いや、だから…」
眉を下げてうるうるの瞳を向けてくるから、その顔を覗き込もうと近付けば。
「そうゆうさ…優しさがツラいのよ…」
俺の視線から逃げるように目を逸らしたにの。
そんな傷付いたみたいな顔させたいワケじゃない。
そういう意味じゃなくて…
分かったんだよ、俺。
夢が先行しちゃったけど。
動機はかなり不純だったけど。
紛れもなく俺は…
正真正銘にののことが好きだって。