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例えばこんな日常

第25章 君が好きだと叫びたい/SO






「ねぇねぇ大野くん!」


その日、日課のスケッチをしていた俺に突然投げかけられた明るい声。


今まで休み時間に声を掛けられたことなんてなかったから思いっ切り驚いてしまって。


「え、ごめん。そんなにビックリした?」

「あ…いや、えっと…」


咄嗟にスケッチブックを閉じて俯きながら眼鏡を直していると。


「あのさ、良かったら俺らとグループワーク組まない?」


弾むようなその声に顔を上げれば、ニッと口角を上げて俺の返事を待つ優しい笑顔。


相葉くんから話しかけられたことも驚きだけど、何よりその内容に自分の耳を疑った。


え、グループワークを俺と一緒に…?


ニコニコして俺を見つめる相葉くんは、クラスでも特に元気で明るくて人気者。


そんな相葉くんの周りにはもちろん友達が山ほど居て。


友達…


俺らとってことは…


「ほら、グループワークって5人じゃん?
俺とにのと松潤と翔ちゃんとさぁ…
あと一人どうしよってなって…」

「っ…」


指を折って数えながら困ったように口を尖らせる相葉くん。


そんな姿を見上げつつ、やっぱりそこにあった名前にじわじわと体が熱くなる。


櫻井くん…


櫻井くんと、グループワーク…?


「ねぇダメ?大野くんお願いっ!」


顔の前でパチンと手を合わせて『お願い!』って言われてるけど。


そんなの願ったり叶ったりっていうか…


お、俺で…いいの…?


「あ、あの…えっと、ほんとに俺…?」

「え?何が?」

「いやその…俺で、いいのかなって…」

「なんで?いいも何もお願いしてんのはこっちだよ?」


キョトンとした顔で見つめてくるその目を見れずにまた俯いてしまって。


「いいの?ねぇねぇ!」

「あ…うん…」

「よっしゃありがとっ!ねぇいいってー!」


小さく頷いた途端、振り返って頭の上で大きなマルを作る相葉くん。


「いや聞こえてたし」

「くはっ、デカいのよ声が」

「おーありがとなー雅紀」


ドアの側の席に集まる集団の中、こちらに手を振る爽やかな笑顔を捉えて。


その視線が俺と重なったと思った瞬間。


ニコッと笑いかけられて、どくんと心臓が波打った。

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