
例えばこんな日常
第25章 君が好きだと叫びたい/SO
今ここに置かれている状況が信じられない。
相葉くんにグループワーク組もうって誘われたや否や、有無を言わさず連れて来られたファミレス。
向かいで難しい顔をしながらメニュー表とにらめっこをしている松本くん。
その隣で『にのはこれね』って二宮くんのメニュー表を取り上げてボタンを押そうとする相葉くんと。
そして、俺の真横には。
「あー…どっちにすっかなぁ…」
うーんと考え込んでぽつり呟く櫻井くんが居て。
トントン拍子に話が進んで『親睦会』という名目で連れて来られたはいいものの。
俺にはまだこの輪の中に入っていく準備なんて更々出来てなかったから。
さっきから目の前で繰り広げられている、きっといつもの"日常"に気後れして仕方がない。
「も〜勝手に押すなよ!決めてないじゃんみんな」
「え、決まってないの?にの決まってるよね?」
「お前が決めたんだろうよ」
「大野くんは?決まった?」
二人のやり取りだと思っていたら急に俺に振られて、慌ててメニュー表から顔を上げた。
「あ、えっと…チョコレートパフェで…」
「えっマジ!?大野くんもしかしてスイーツ男子?」
キラキラと目を輝かせながら前のめりで聞いてくる相葉くんに若干後ずされば。
「へぇ〜大野って甘いの食うんだ。なんか意外だな」
隣から聞こえた"大野"ってフレーズがやけに耳にこだまして。
名前を呼んでもらえたことにドキドキしながらチラッと櫻井くんを見遣ると。
「じゃあ俺もチーズケーキやめてチョコパフェにすっかな」
頬杖をついてふふっと笑うその顔に釘付けになった。
…やっぱり、カッコいい。
じんわりと顔に熱が集まっていくのが分かる。
落ち着かない心臓が隣の櫻井くんに聞こえてしまいそうで、ぎこちなく眼鏡を直してみたりして。
「え〜じゃあ俺も生姜焼き定食とチョコパフェにしよっかなぁ」
「は?お前は俺とパンケーキ半分こだろ」
「よし、相葉くん押して。店員さん来るまでに決める!」
「ふは、松潤どうせ決めらんねーんだろ」
賑やかさの絶えないこの空間に、こんな地味な俺が居るなんて信じられない。
何だか久し振りのような心地に思わずふふっと笑みが溢れる。
