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例えばこんな日常

第25章 君が好きだと叫びたい/SO






「へぇ…大野ってそんな感じで笑うんだ」


ぽつり届いた言葉に思わず隣を振り向く。


少し驚いているような半笑いで俺をジッと見つめる丸い瞳。


こんなにバッチリ櫻井くんと目が合ったのは初めてで。


っ…!


恥ずかしくなって持っていたメニュー表で咄嗟に顔を隠したら。


「え?」

「あ、なに~?翔ちゃんなんかした?」


メニュー表の向こう側から聞こえる相葉くんのからかうような声に、益々顔に熱が集まってくる。


櫻井くんに…そんなこと言われるなんて。


俺…そんなに笑ってないんだっけ…?


ぐるぐると頭を駆け巡るのは教室の風景。


浮かんでくるのは一人ぽつんと片隅に座る俺の画。


そうだよね…


俺があの教室で笑う場面なんてそうそうないか…


「え、今笑ったの?うっそ!見たい見たい!」

「うるさいなぁ。動物園じゃないのよここは」

「俺も気になる。大野が笑った顔見たことねーもん」


必死に顔を隠している向こう側で次々に飛び交う俺への期待。


そんなハードル上げられたらもう顔も見せらんないじゃん…!


頑なに小さくなって黙り込んでいると『お前らなぁ』って呆れた櫻井くんの声が。


「そんな笑えっていきなり言われて笑える訳ねーじゃん。なぁ?大野」


そう言い終えて肩にポンと置かれた右手。


ひっ…!


そのままポンポンと数回叩かれている間も、体は完全に強張ってしまって。


さ、櫻井くんが…
俺を触っている…


その感触に尋常じゃないくらい高鳴りだす心臓。


こんなのスキンシップとも呼べないくらいの触れ合いなのに。


こんなにもドキドキして…


俺、櫻井くんのことほんとに…


「ねぇ大野くんさ、この人がうるさいから見してやってくんない?」


動かない俺に向かってつんつんとメニュー表をつついてきたその声は二宮くんで。


「相葉くんが面白いことしてくれるって言うから見てやってよ」

「はっ?言ってねぇだろっ!」

「ちょっと黙って。それっ」


相葉くんの声を二宮くんが遮ったと思ったら急に目の前が明るくなって。


盾にしていたメニュー表を奪われ、途端に集まる視線にきゅうっと縮こまってしまった。

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