
例えばこんな日常
第25章 君が好きだと叫びたい/SO
それから。
二宮くんの無茶振りに応えた相葉くんに笑わされ、よく分からない拍手と歓声を浴び。
そういえば俺の下の名前も知らないって言われて、大野のことを何も知らないって話になり。
家族構成から生い立ち、休日の過ごし方まで…
まるで面接みたいな怒涛の質問攻めにあった。
そもそも人と話すこと自体そんなに得意じゃないから。
興味津々に前のめりで聞いてくるみんなの圧に押されっぱなしで、ただただ小さな声で答えるのが精一杯。
「そうなんだ~全然知らなかった」
「んね。家も俺らと近所だったし」
パンケーキを相葉くんに取り分けながら話す二宮くん。
そう、実はこの二人と家が近所なんだ。
俺は知ってたけど、そんなこと二人は知る筈もなくて。
「それでさ、大野はなんか得意なこととかあんの?」
ふいに、向かいでチョコレートパフェをつつく松本くんに投げかけられ。
「得意なこと…」
「そ。得意な教科とか、スポーツとかさ」
そう言われて考え込む。
特にこれと言って得意なことって…
…あ。
「あの…絵とか…」
「え?」
「ぁ…絵は、描くの好きかな…」
「絵?」
小さく呟いた俺の答えにびっくりする程みんなが食いついた。
「あ!そういえば今日なんか描いてなかった?」
そうだ!と言わんばかりの顔で相葉くんに指を差されて心臓が飛び跳ねた。
まさか…
スケッチブックのことバレてた…?
「今それ持ってないの?」
更に前のめりでそう迫られたけど、あのスケッチブックをここに出すわけにはいかない。
だってあれには櫻井くんしか描いてないから。
もしそんなことがみんなにバレたら…
考えただけで身震いがしそうで、抱き締めるようにカバンを胸元に手繰り寄せる。
ぎゅっとカバンの端を握り締めつつ、あからさまに目も泳いでしまって。
「…大野?」
案の定、心配そうな櫻井くんの声が俯く俺の耳に届き。
ただ絵を見せてって言われただけでこんなにガチガチになるなんておかしいに決まってる。
見えてないけど、きっとみんなもポカンとしてるに違いない。
でも、でも…
絶対これだけは見られちゃいけない。
もし見られてしまったら…
もう俺の恋は終わってしまうから。
