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例えばこんな日常

第25章 君が好きだと叫びたい/SO






漂う微妙な空気。


それを作り出しているのは明らかに俺。


ダメだ…


なんか言わなきゃ…


そう思ってそっと顔を上げた時、沈黙を破ったのは優しく穏やかな声。


「まぁそんな焦んなって。大野だっていきなりそんなこと言われても困るよな?」


ふふっと笑いながらスプーンを口に運ぶ櫻井くんと目が合って。


「これから一緒に居ること増えんだしさ。
いつか見してもらえるって。な?大野」


眉を上げて促すような視線を送られ、その眼差しに心臓がきゅうっと締め付けられた。


それに。


"これから一緒に居る"


さりげないフォローで言ったつもりなんだろうけど、櫻井くんから発せられたそのフレーズが耳に纏わりついて離れない。


ずっとふわふわしてて、ここに来てもただ緊張しっぱなしだったけど。


こうして改めて言われると、ようやく実感として湧いてきたような。


ほんとに俺…


このグループに、入っちゃったんだ…


「ちぇ。ねぇ今度絶対見してよね、大ちゃん!」

「……ぇ」

「ふは、何だよそれ」

「え?あだ名。大野だから大ちゃん」

「ねぇお前翔ちゃんの話聞いてた?
ゆっくりでいいって意味なの。なんですでにゼロ距離なのよ」

「え〜いいじゃん。せっかく仲良くなったんだからさ!ね、大ちゃん!」


周りに突っ込まれながらも俺に笑顔を向けてくれる相葉くんに、心がじんわりあったかくなる心地がして。


「…ありがとう」


自分の中で精一杯のつもりの笑顔でそう応えれば、また恥ずかしいくらいの歓声が俺を包み込んだ。




***




それからというもの、俺の学校生活はガラリと変わった。


通学は相葉くんと二宮くんと一緒になり。


一人でスケッチばかりしていた休み時間は、常に5人で過ごすようにもなって。


この5人のグループは、一年を通して全教科共通となるワークスタイル。


だから、授業も事あるごとにこの5人で学ぶことが増えた。


もちろん5人で居る時間は、それはそれは楽しいものだけれど。


それより何より。


「なぁ智、英語の課題っていつまでだったっけ?」


数列先から移動してきた櫻井くんが、いつものように前の席の椅子に跨って座る。


こうして櫻井くんとこんな風に話せてることが、本当に信じられないんだ。



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